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「皆さんとともに日本国憲法を守る」から「憲法にのっとり」に

新天皇の「お言葉」で「日本国憲法」尊重姿勢が弱まった理由は…背景に安倍首相による取り込みと官邸の圧力

 実際、明仁天皇の戦後民主主義や憲法を守る姿勢を嫌い、陰に陽に圧力をかけてきた安倍首相だが、生前退位が決まってからは、ターゲットを新天皇になる徳仁皇太子に移し、この間、しきりに取り込み工作を展開してきた。

 極めつきが、2月22日、3月29日、4月8日と3度にわたる皇太子との面会だろう。総理大臣が天皇に国内外の情勢を報告する「内奏」は年に数回ほどおこなわれているが、現役の首相が皇太子と一対一で面会をするのは前代未聞。それを約1カ月ちょっとのあいだに3度もおこなったのだ。

 しかも、そのうちの1回は、衝撃的な内容の会談をしていたことが明らかになった。朝日新聞がスクープしたのだが、3月29日、2回目に皇太子に面会した際、安倍首相は「令和」を含む新元号候補である6案を事前に説明していたというのである。

 言わずもがな、憲法4条で「天皇は国政に関する権能を有しない」と定められており、新元号の事前選定に関わっていれば、明白な憲法違反だ。「平成」への代替わりのときも、即位したばかりの新天皇に新元号を伝えたことが問題になったが、これは閣議決定する直前に「平成」という最終案を伝えただけだった。ところが、今回の安倍首相の行動は、6案を提示して、次期天皇に元号選定にかかわらせるかたちをとったのだ。

「慎重な皇太子殿下のことですから、元号選定に意思を示すようなことはしておられないでしょうが、『陛下のことをこんなに尊重申し上げている』ことを示そうとした安倍首相のアピールにはなったはず。今回、陛下が“お言葉”で憲法に踏み込めなかったのは、その影響がなかったとは言えません」(前出・ベテラン皇室ジャーナリスト)

 なんとも暗澹とする話だが、安倍首相の新天皇取り込みはまだ始まったばかりだ。安倍首相はこれから、年に数回は「内奏」などで面談するが、その機会を利用してどんどん国家主義的な考え方を吹き込み、政治利用を強めていくだろう。

「表からのアプローチだけでなく、裏からの工作も激化するでしょう。すでに官邸は宮内庁だけでなく、皇后陛下にも、古巣である外務省を通じて働きかけをおこなっている。皇后陛下が外交に興味をもっていることを利用して“これまで以上に皇室外交にご尽力を”などのメッセージを伝え、取り込みを図っているようです」(全国紙政治部記者)

 もっとも、一方では、疎遠になっていた明仁上皇と徳仁天皇がここ数年、再び結びつきを強くし、明仁上皇が平和と憲法、民主主義を守る自分の姿勢を受け継いでほしいということを強く伝えているとも聞く。実際、その頃から徳仁皇太子も憲法について口にするようになり、明仁天皇・皇后が護憲姿勢を明確にしたすぐ後の2014年の誕生日会見では、徳仁皇太子も「今日の日本は、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、現在、わが国は平和と繁栄を享受しております」などと語っていた。

 新天皇は明仁上皇の護憲の意思を継ぐのか。それとも、安倍政権に取り込まれていくのか。明日4日は、新天皇の一般参賀がおこなわれ、国民に向けて再び「お言葉」を出す予定だ。その内容が今後を占う鍵になるかもしれない。

最終更新:2019.05.03 11:19

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