たとえば、関西電力は美浜、大飯、高浜の3原発を擁するが、年間広告費は2015年度の31億円から翌16年度に92億円と実に3倍増。2017年の大飯、2018年の高浜再稼働とリンクしていると考えられるだろう。
川内原発、玄海原発を持つ九州電力も露骨だ。専門家から火山のリスクなどが散々指摘されながら2015年に川内原発を再稼働し、昨年は玄海原発も続いた。前後の年間広告費を見てみると、2014年度に12億円だったものが、17億円(2015年度)、30億円(2016年度)、41億円(2017年度)と3年で3倍に膨れあがった。
また、浜岡原発をかかえる中部電力は2014年度に36億円まで下がったが、2015年度は76億円と倍以上伸ばし、2016年度が約80億円、2017年度が76億円。これは福島原発事故前の2010年度(80億円)と同じ水準まで広告費を回復させたことを意味している。
他にも、東北電力は2016年度に66億円、2017年度に64億円と2年連続で60億円台を記録(2010年度=85億円)、中国電力は2017年度に35億円(2010年度=42億円)、四国電力は2017年度に24億円(2010年度=30億円)まで上昇しており、いずれも福島事故前の水準に迫ろうという勢いだ。
非公開の電事連や原子力発電環境整備機構(NUMO)など関連団体の広告予算もかなりの水準で上昇しているのは間違いない。事実、新聞や雑誌の広告だけでなく、すこし前からはテレビでも電事連のCMがごく普通に垂れ流されるようになっている。
こうした“原発広告漬け”の中、メディアの原発事故関連の報道は激減し、原発再稼働に対する批判も行われず、そして今回のように「平成の終わり」という大イベントでの振り返り特番でも、原発事故は「なかったこと」にされてしまったのだ。
おそらく本日から明日にかけて大量に流される各局の「即位特番」や「平成振り返り特番」でも、福島原発事故が正面から取り上げられることはないだろう。
安倍政権への忖度、原子力ムラによる大量の広告出稿によって、マスコミは再び原発安全神話に加担し、原子力ムラと一体化しつつある。平成の最大の人災でもあり、世界でも未曾有の原発事故を平成の終わりとともに「なかった」ことにされてしまうのだろうか。
(編集部)
最終更新:2019.05.01 08:40