菅官房長官のこうした懐柔工作は、政権に批判的なキャスターにも向けられている。毎日新聞の主筆や『NEWS23』(TBS)アンカーなどを務めた故・岸井成格氏は、佐高信氏との対談本『偽りの保守・安倍晋三の正体』(講談社)で菅官房長官の手口を証言している。これによれば、岸井氏は企業の幹部に話をするという勉強会を長く続けていたのだが、その場に菅官房長官が突然、やってきたというのだ。
「(菅官房長官は)黙って来た。誰かから聞いて知ったんだろう。最初から最後までいたよ。終わると『今日はいい話を聞かせていただいて、ありがとうございました』と言って帰っていった。怖いよな」
「『どこで何を話しているか、全部知っていますよ』ということを見せているわけだ。『人脈も把握しています。岸井さんが動いているところにはいつでも入っていけますよ』というメッセージかもしれない」(『偽りの保守・安倍晋三の正体』より)
それどころか、いま、ネット上で大拡散している「パンケーキを頬張る菅官房長官」の写真にしても、菅官房長官とマスコミの癒着が背景にある。この写真はNHKの『政治マガジン』が昨年7月25日に配信した記事内で掲載されているものなのだが、この記事自体、「菅官房長官がNHKに書かせたもの」と言われているシロモノだからだ。
本サイトの既報に詳しいが(https://lite-ra.com/2018/07/post-4159.html)、自民党総裁選を控えていた当時、安倍3選後の人事について安倍首相を擁する派閥・清和会が菅官房長官のすげ替えを要求しており、一方、菅氏は官房長官留任の流れをつくろうとNHKを使ったと見られている。つまり、猟官運動のために菅官房長官はNHKに提灯記事を書かせたのではないかというのだ。
テレビ局側にしてみれば、今回の菅官房長官人気は、安倍政権による“メディア圧力担当者”に媚びを売る絶好の機会だった。そして実際に、無批判な菅官房長官礼賛が垂れ流された──。このテレビの惨状こそが、「不正問題が問題化しない社会」をつくり、助長していることは間違いないだろう。
(編集部)
最終更新:2019.04.29 11:39