だいたい、都構想実現には1500億円ものコストがかかると言われている。橋下氏らは都構想によって府と市の「二重行政の無駄」がなくなり、効率化とコスト削減ができると言い張るが、これもとっくのとうに反論され尽くされていることだ。
たとえば大阪市と府は都構想の財政効果(改革効果額)を140億円としているが、森裕之・立命館大学教授によると〈このほぼ全てが二重行政とは関係のない民営化・民間委託・経費節約〉であり、〈それらを除外した二重行政の廃止自体で生み出される財政効果は全体でたった四〇〇〇万円しかなく、大阪市(特別区)においてはゼロとなっている〉(「世界」19年4月号/岩波書店)。
また、橋下氏らは「大阪万博誘致などが有権者に評価された」「万博には都構想が必要」などと主張するが、大阪市を廃止して新たに特別区を設置するには莫大な引き継ぎ・再編コストがかかる。『大阪都構想が日本を破壊する』(文藝春秋)などで〈都構想実現後も当面の間、おそらくは、準備期間の2年間を含めた少なくとも5年間程度は、彼らの行政パワーのかなりの部分を、自らの新しい仕事を作るための仕事に投入されていき、大阪市民のために十分投入されなくなってしまう〉と警鐘を鳴らし続けてきた藤井聡・京都大学大学院教授は、むしろ“都構想が大阪万博に大きな障害を与える”と指摘している。
いずれにしても、4年前に否定されている大阪都構想は、当時の住民投票前とくらべて、今回のW選挙では明らかに議論の量や質が落ちていた。にもかかわらず恐ろしいのは、あいかわらず、大阪では維新の勢いが止まらないことのほうだろう。