しかも、問題は下関北九州道路だけではない。第二次安倍政権になってから、こうした「安倍案件」の公共事業が息を吹き返し、事業化に向けて動き出しているのだ。
たとえば、下関北九州道路と同様、「安倍道路」と呼ばれてきたのが、安倍首相の地元・長門市を通る「山陰自動車道」(山口県美祢市〜鳥取県鳥取市)。総事業費は約4500億円とも言われるものだが、本サイトでも連載をしているジャーナリストの横田一氏がこの問題をレポートした「週刊朝日」(朝日新聞出版)2013年6月7日号によれば、山陰自動車道は小泉純一郎政権時に総延長距離が1万4000キロから9342キロに引き下げられたのだが、第二次安倍政権の発足によって議論などなかったかのような状態に。そして、2013年1月には中尾友昭・下関市長(当時)が、このような安倍首相の発言を紹介したという。
「『(私が)首相になったから下関は良くなりますよ』と仰られ、『山陰自動車道は(国交省OBの)山本繁太郎知事が誕生したのだから必ずできますよ』とお墨付きを与えてくれました」
実際、安倍首相は事ある毎にこの山陰自動車道に言及してきた。2016年には「国土の骨格となる基幹的な道路だ」「予算を確保したい」と言い、昨年7月にも「山陰は最大のミッシングリンク(高速道路未整備区間)だ」と明言。そして、国交省もそれに合わせるように、昨年11月、先行整備する優先区間を最終決定するために動きを進めている。
さらに、同じく安倍首相のお膝元である山口県岩国市では、民主党政権時代に槍玉にあがって検証対象となった「平瀬ダム」が、安倍政権下の2014年3月より着工。2023年に完成予定となっているが、総工費は当初の想定から120億円増え、860億円にまで膨らんでいる。