明確な被害者もいないにもかかわらず、ピエール瀧がここまで「極悪人」として断罪され、すべての仕事を奪われるさまを見ていれば、もしも違法薬物を止めるべく医療機関のサポートを求めたいと思っている人がいたとしても、外に出ることを躊躇してしまうだろう。
なぜ世間はここまで過剰な反応を見せ、メディアもここまで怯えきった対応になるのか。
それは、日本が、「我が村のルールを破った者は厳罰に処されなくてはならない。海外でどんな法律の運用がなされているかなど知ったことではないし、治療の現場にも興味はない。とにかく、ピエール瀧は犯罪者である。彼の行いの何が“罪”なのかはわからないし、考える気もない。とにかく、罰せられるべき犯罪者だ。理由はひとつ。“我が村のルールを破った”からだ!」と主張する奴隷で構成されている国だからだ。
これは、薬物事犯に関することだけに限らない。
「一度お上が決めたことは絶対に守らなければならない」「“なぜ守らなければならないのか”なんて考える必要はない。ただ命令されたから守らねばならないのだ」という考え方は、ありとあらゆる場面で表面化している。
「みんなが、安全で、心地よく、楽しく暮らすことができる社会とはどんな社会だろう」と、自分の頭で考えることをせず、「上から言われた命令は絶対」という価値観に慣らされてしまっているから、一部の金持ちだけが優遇される政策も、為政者が自分の都合で公文書を書き換えるような状況も、すんなりと認められるというあり得ない社会が現出してしまう。自分の私利私欲のために権力を悪用しようとする権力者にとってこんなに「良い国民」はいないだろう。この状況に改めて向き合い直す必要がある。
ちなみに、白石和彌監督の映画『麻雀放浪記2020』は、ピエール瀧の出演部分をノーカットで公開すると正式に発表した。松本人志やビートたけしとは真逆の姿勢だが、これが当たり前なのである。
(編集部)
最終更新:2019.03.21 02:14