実際、昨日の国会では、NHKが報じなかった部分にこそ審議の核心があった。
たとえば、立憲民主党の福山哲郎議員の質疑では、沖縄の県民投票の結果にかかわらず土砂を投入することが安倍首相と岩屋毅防衛相とのあいだで決まっていたことが明らかになった。これは民主的手続きを踏んで実施された県民投票を愚弄する行為であり、「結果は真摯に受け止める」という説明は一体何なのかという話だ。
だが、安倍首相は「結果については論評する立場にない」と壊れたテープレコーダーのように繰り返し、「普天間基地の全面返還を1日も早く実現するというのが安倍政権の基本方針。そのためには辺野古の基地が建設されなければならない。この方針を私は決めている」と答弁。つまり、この国では「私が決めた方針」が最優先されると言い放ったのである。
しかも、統計不正問題では、NHKが取り上げた小池議員の質疑で安倍首相は信じがたい暴言を吐いたのだ。
昨日5日の『ニュース7』では、共産党の小池晃議員が特別監察委員会の樋口美雄委員長の公正・中立性を問題視し、前述したように安倍首相が“樋口委員長は統計の専門家だから適格だ”と主張して終わったが、実際にはつづきがある。小池議員はこのあと「質問に答えてない」「国民からみて中立なのかということを訊いている」と追及したのだが、対して安倍首相はやはり同じ主張を繰り返す始末。これに野党理事たちが反発し審議は一時ストップしたのだが、再開されると、安倍首相はこう述べたのだ。
「私はお答えをしているつもりですよ? 私のお答えがですね、小池議員の気に食わないのかもしれませんが、私は誠実にお答えさせていただいていますよ!」
質問に答えていないから追及されているのに、「気に食わないんだろう」と決め付ける──。国会審議を冒涜する、総理大臣としてあるまじき暴言であり、これには金子原二郎・参院予算委員長も「言葉に注意してわかりやすく丁寧に答弁を」と注意をおこなったが、こうした国会審議に対する安倍首相の姿勢が如実にあらわれた部分を、NHKはニュースで伝えようとはしないのだ。
いや、NHKは安倍首相にとって不都合な審議内容、答弁をカットしているだけではない。
昨日の午前中の審議では、福山議員が参考人の樋口委員長に対して、特別監察委による追加報告書でおこなわれた自治体へのヒアリングの人数や対象者について質問したが、樋口委員長はまったく答えになっていない答弁を何度も繰り返した。それによって審議は何度もストップしたのだが、NHKは12時からの『NHKニュース』で、こう伝えたのだ。
「午前中の委員会では、福山氏が厚生労働省の統計問題をめぐる参考人の答弁に納得せず、たびたび質疑が中断しました」
樋口委員長が質問に答えないから中断したのに、それがなぜか福山議員が納得せずに中断したと伝える。これではフェイクニュースではないか。