はっきり言うが、第二次安倍政権下でエンゲル係数が上昇したのは、消費支出が伸び悩んでいるからだ。富裕層が金融資産や不動産を増やす一方で、庶民は「生活のために使えるお金」がどんどん少なくなっているのだ。
そして、その消費支出の減少に追い打ちをかけたのが、2014年の消費税の増税だ。2月12日の衆院予算委員会でも共産党の志位和夫委員長が安倍首相に追及をおこなったが、2人以上世帯の実質家計消費支出は、2013年の平均は363.6万円だったのに、2018年には平均338.7万円。じつに約25万円も減っているのである。
だが、総務省はそうした現実をないことにするように、「消費支出」ではなく、富裕層による貯蓄や金融資産までもが含まれる「実質可処分所得額」をいろんな言い訳にまぎれてこっそり持ち出し、そうしてはじき出された数値を「修正エンゲル係数」だと言い張っているのだ。
統計不正問題の発覚によって、昨年の実質賃金は、より生活実感に近い「参考値」で大半の月でマイナスになることが野党の試算で判明している。賃金が伸びず、生活の基本である食費も精一杯という厳しい生活を強いられている人が大勢いるというのに、そうした現実を反映した「エンゲル係数」さえ、考え方を根本から覆した「別な何か」をつくりあげて「修正エンゲル係数」などと称してすり替えることは、統計不正問題と同根の“アベノミクス偽装”そのものではないか。
しかも、注目すべきは、経済指標を歪めたこの驚きのレポートが公表された時期。前述したように、安倍首相が小川議員から「実質賃金が下がり、エンゲル係数は急上昇している」と追及を受け、「物価変動のほか、食生活や生活スタイルの変化が含まれているもの」と強弁してから約4カ月後の2018年6月8日だということだ。
この「修正エンゲル係数」は、つまり、安倍首相の主張を正当化するために、偽のエンゲル係数を流通させてしまおうという、総務省の意図があらわれたものではないのか。
もしかしたら「毎月勤労統計」における厚労省と同様、官邸から「エンゲル係数が上昇しているのをどうにかしろ」と圧力がかけられた可能性もある。
総務省は統計不正問題で、つい先日も、統計委員会の西村清彦委員長が国会に参考人として出席することを拒否すると記した文書を、勝手に捏造して野党に送付していたことが発覚したばかり。やりかねない話だ。
ともかく、この「トンデモ」としか言いようがない「偽エンゲル係数」問題についても、国会とメディアの徹底追及が必要だろう。
(編集部)
最終更新:2019.03.04 11:45