そもそも、ふたりの北朝鮮生存情報については、共同通信が昨年3月以降なんども報じ続けてきた。18年3月16日には“ストックホルム合意の前である2014年5月に、北朝鮮側が田中さんについて「入国していた」と日本政府に伝えていた”と報道。同3月25日には、金田さんの入国についても伝えられていたと続報をうった。同7月21日には、米朝首脳会談開催前後に田中さん、金田さんの二人以外に「新たな入国者はいない」と北朝鮮側から伝えられていたことが判明と報じた。なお、同10月19日には、その月の上旬に安倍首相の片腕である北村滋・内閣情報官が北朝鮮側と接触した際、〈田中さんを含む拉致被害者の安否確認方法を協議した可能性がある〉と報じている。
日本政府は17名を拉致被害者と認定しているのに対し、北朝鮮の従来の主張は、2002年に帰国した蓮池薫さんら5名以外は「8人死亡、4人は入国していない」というものだったはず。北朝鮮が10年以上も「入国」すら認めてこなかったことを踏まえれば画期的な話だろう。にもかかわらず安倍首相らは、報道を受けて国会でも度々追及があったものの、「ゼロ回答」に終始。田中さん、金田さんの情報はおろか、北朝鮮側から二人について伝達があったことさえも隠してきた。
たとえば、昨年3月28日の衆院予算員会では、立憲民主党の有田芳生議員が「北朝鮮は2014年に、田中さんは生存していると、そういう報告をしてきたと報道されていますが、事実ですか」と質したが、安倍首相は「今後の対応に支障を来すこれはおそれがある」などと言って「この報道についての逐一のコメントについては、お答えは差し控えさせていただきたい」「どのような対応をしているかどうかということについても、お答えは差し控えさせていただきたい」と繰り返し拒否。
ほかにも同年3月20日の衆院安全保障委員会での河野太郎外相、4月2日の衆院拉致問題等に関する委員会及び6月4日の参院同委での加藤勝信・拉致問題担当相、11月7日さん予算委員会での安倍首相の答弁でも、同じように完全なノーコメントを貫いている。