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官民ファンドの高額報酬騒動は政権批判への意趣返か!? 経産省の大赤字クールジャパンへのデタラメ投資に反対の社長をパージ

 簡単におさらいしておくと、これは、旧革新が100パーセント株主として出資した官製映画会社・All Nippon Entertainment Works(ANEW)をめぐる問題だ。

 同社は「日本国内コンテンツのハリウッド・リメイクを共同プロデュース」を謳って、アニメ作品や映画などを米国で実写化することを目的としていたのだが、そのほとんどが事実上の企画倒れになる一方で、莫大な赤字を垂れ流していたが、旧革新は2011年から2014年にかけて、少なくとも約22億円を拠出。ところが結局、昨年5月にはANEWを二束三文で民間に売却したのである。

 9月の改組で、旧革新はJICの完全子会社になった。それだけでなく、JICは官民ファンド全体の再構築を狙っており、たとえば問題が山積している海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)も傘下に置く計画だった。周知の通り、クールジャパン機構は日本アニメの海外配信事業の中止など、出資事業の失敗が相次いでおり、赤字を重ね続けていた。そうしたことから、JICへの統合によって、クールジャパン関連の血税の無駄遣いや事業計画のデタラメさを糊塗しようという政府の思惑もあったと見られている。

 しかし、田中社長はこうした政府方針に公然と反対してきた。たとえば官民ファンドによる「救済投資」に関しては就任早々に「収益力が低くじり貧の企業、ゾンビ企業の延命はしない」(9月25日の会見)と断じ、クールジャパン機構との統合についても「今年度はまったく無理」(朝日新聞10月17日付のインタビュー)と難色を示していた。前出の記者が続ける。

「田中氏は生粋のバンカー。いくら政府が後ろ盾といっても、収益を得られない投資はあり得ないという民間的発想の持ち主で、だからこそ高額報酬も当然と考えていたはず。これまでゾンビ企業の救済ばかりしてきた官民ファンドの方針や、国策ありきのデタラメな投資にはドライにノーを言える人だから、当然、政権の思惑とすれ違う。そこで仕組まれたのが、高額報酬問題をダシにつかった“田中おろし”だったのです」

 実際、経産省は12月前半、JIC関連の2019年度財政投融資に関して、追加出資の予算要求額1600億円から約7割も減額するよう調整。露骨に圧力をかけて田中社長の辞任を迫っていた。しかし、周知の通り現実は、逆に田中社長が民側の幹部を味方につけて一斉に辞任。経産省は思いもよらぬ逆襲にあい、あまつさえ「法治国家とは思えない」との強烈なビンタを食らって、JICは事実上休止した。

 いずれにしても、考え直すべきは、安倍政権キモ入りの官民ファンドなるシロモノの在り方だ。繰り返しになるが、官民ファンドは政府が後ろ盾になることで資金調達や投資を円滑にすると謳われる一方、現実にはゾンビ企業の救済や、クールジャパンのような“トンデモ国策”にばかり大金が注がれる結果となっていた。ようは、国民の資産を勝手に「投資」という名目の博打に使って、大失敗を連発し続けていたわけである。

 今後、政府がJICをどのように扱っていくは不透明だが、少なくとも安倍政権と経産省には、高額報酬問題を盾に正義ヅラする資格はないだろう。こんなめちゃくちゃな状況を改組によってうやむやにしようとした責任は重い。安倍首相には、国民の金をドブに捨てた責任をしっかりとってもらわねばならない。

最終更新:2018.12.13 08:05

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