小説、マンガ、ビジネス、週刊誌…本と雑誌のニュース/リテラ

官民ファンドの高額報酬騒動は政権批判への意趣返か!? 経産省の大赤字クールジャパンへのデタラメ投資に反対の社長をパージ

辞任した田中社長((JIC公式HPより)

“日本最大の官民ファンド”産業革新投資機構(JIC)をめぐる騒動が目も当てられない有り様になっている。周知の通り、10日には田中正明社長(三菱UFJFG副社長)をはじめとする民間の取締役9人全員が辞任。JICは事実上の休止となったが、その深層は、所管官庁である経産省と安倍官邸による“情報操作”の失敗だったらしい。

「経産省の幹部はこの間、例の高額報酬問題はじめ、マスコミに盛んに田中氏のネガティブ情報を耳打ちしていました。自分たちの言うことをきかない田中氏にプレッシャーをかけ、自主的な退任を迫っていたわけですが、逆に田中氏から公然と批判され、民側取締役全員をつれて三行半を突きつけられた。大失態ですよ」(全国紙経済部記者)

 世耕弘成経産相は、JICと経産省の対立の責任をとるかたちで大臣給与1カ月分を自主返納したが、これで収まるワケがない。そもそも、今回の騒動は、JIC幹部らへの「高額報酬」をめぐる報道から始まった。朝日新聞が11月3日付朝刊1面で、田中社長ら経営陣に最大1億2千万円程度が支払われる報酬体系が導入されることを批判的に報じたのだ。

 JICは「官民ファンド」とは言うものの、政府が95パーセントを出資する事実上の「準政府機関」。その原資である公的資金の元を辿れば、言うまでもなく国民の血税だ。億を超える高額報酬への批判は当然だが、こうしたなかで血相を変えたのが経産省だった。11月9日には嶋田隆事務次官が報酬案の撤回を申し入れ、その約2週間後には大幅に減額した新報酬案を提示したが、田中社長は猛反発。対立が決定的となった。

 だが、もともと批判された高額報酬案は、当初、経産省が認めていたものだ。世耕経産相も国会で「ある程度の報酬を約束しないと、なかなか良い人材はとれない」と説明。経産省の糟谷敏秀・経済産業政策局長(当時)も「民間ファンドと比較しうる報酬水準を確保したい」と答弁している。それが一転、報酬の大幅減を決めたのは、果たして世論に配慮しただけなのだろうか。

 田中社長は10日の会見で、辞任理由について「一度正式に提示した報酬の一方的な破棄という重大な信頼毀損行為により決定的なものとなった」と述べ、「日本国政府の高官が書面で約束した契約を後日、一方的に破棄し、さらに取締役会の議決を恣意的に無視するという行為は日本が法治国家でないことを示している」と政府をこき下ろした。一方、記者から「高額報酬の話題で議論を矮小化させようという動きもある」と質問された田中社長は「極めてミスリーディングな報道で、それも世論形成に影響していればまことに残念なこと」と不満を示し、「仮に報酬1円でも(JICの社長に)来た」と話した。

 繰り返しになるが、高額報酬それ自体は到底看過できないものだ。しかしそれ以上に、今回の騒動の深層には「官民ファンド」の在り方をめぐる政府方針と田中社長の対立が見え隠れする。

 JICは今年9月に、官民ファンド・産業革新機構(以下、旧革新)を改組してつくられた組織だ。もともと旧革新はジャパンディスプレイの救済スキームほか、経営破綻寸前の大企業の再建にジャブジャブと公金を垂れ流すなど、その「国策救済投資」に批判が集中。また、これは本サイトでも以前から伝えてきた(https://lite-ra.com/2017/11/post-3554.html)ことだが、旧革新は「クールジャパン」の名の下に、数十億円の公金をドブに捨てていた。

関連記事

編集部おすすめ

話題の記事

人気記事ランキング

話題のキーワード

リテラをフォローする

フォローすると、タイムラインで
リテラの最新記事が確認できます。