それにしても、今回の秋篠宮発言で浮き彫りになったのは、日本の民主主義がいかに後退しているか、ということだ。
平成の代替わりの際には、皇室儀式に莫大な国費を投じることに対して反対運動が起こり、批判する報道も相次いだ。憲法20条などが定める「政教分離」に違反するとして違憲訴訟が各地で相次ぎ、1995年には原告の訴えこそ棄却されたものの大阪高裁が「政教分離規定違反の疑いを一概に否定できない」と指摘している。
ところが、今回の今上天皇から皇太子徳仁親王への代替わり儀式については、そういった反対はほとんど出てきていなかった。大手紙やNHK・民放などのマスコミも、大嘗祭などに際する儀式について、公費を投じる政府の決定やその内容を批判しようという姿勢は皆無だった。
その結果、儀式を執り行う主体である皇族から「政教分離に反しているのではないか」という疑義が呈される事態になってしまったのである。
しかも、この秋篠宮の非常にまっとうな指摘を受けて、政府が方針を変えるかというと、そういうことはまったくないようだ。秋篠宮の意向を無視して、宮廷費で大嘗祭を強行しようとしているのはもちろん、官邸幹部は裏で秋篠宮を激しく批判しているといわれる。宮内庁はきょう、「(秋篠宮の)宮内庁宮内庁への叱責と受け止めている」という奇妙な言い方で謝罪したが、官邸は秋篠宮をコントロールできなかったとして、宮内庁幹部の更迭を検討し始めたとの情報も漏れ伝わって来た。
そして、ネットでは、安倍支持者から「閣議決定に従わないだと? 何様のつもりだよ」「どうやら皇族に反日パヨクが混じっていたようだ」などと、秋篠宮を攻撃する声が出てくる始末だ。
安倍政権が右傾化のために皇室を政治利用してきたにもかかわらず、実際は歴代のどの政権よりも皇室を軽視していること、今の右派が右翼思想の源泉である皇室よりも安倍首相を奉るようになってしまったこと、そして、メディアや野党の後退の結果、皇室がこの国でもっとも日本国憲法を尊重する存在となってしまったことなどについては、これまで何度も指摘してきたが、この倒錯した状況はこれからさらにエスカレートしていくことになるだろう。
(エンジョウトオル)
最終更新:2018.12.04 11:34