だいたい、小川氏の「寄付金私的流用」疑惑がトラブルとなってすぎやま氏は退任したのだから、新代表の百田氏や、呼びかけ人として設立時からかかわってきた上念氏はそれを知っていたはずだ。実際、上念氏は「(すぎやま氏が代表を降りたあと)小川さんが事務局長に留まりながら、そのトラブルがつづきそうだったんで、『一旦辞めたほうがいいですよ』と周りで言った」と語っていた。つまり、彼らは小川氏の疑惑を把握しながら、公表しないまま数カ月間も事務局長の座に留まらせていたのではないか。
にもかかわらず、金銭トラブルの事実を「週刊文春」に嗅ぎつけられ慌てて公表したばかりか、一般社団法人の代表理事だというのに、自分には何の責任もないとばかりにシラを切る。
挙げ句、「スポンサーになってくれている人とお金のトラブルを起こすというのは、これはダメですよ」(有本氏)、「社会人常識としてアウトです(笑)」(上念氏)、「あってはならないこと」(百田氏)などと他人事のように小川氏を責め立て、百田氏にいたっては「小川さんがどういう人かっていうのは、僕らもよくわからないんですよ、じつは」とまで言い出す始末。
これまで極右界隈では、「新しい歴史教科書をつくる会」の主導権争いによる分裂騒動や、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)での金銭トラブルによる仲間割れ、そして、「日本文化チャンネル桜」の水島聡社長が告発した田母神俊雄氏による政治資金横領疑惑など、ゲスな内輪揉めが絶えなかった。そう考えてみると、金や利権絡みの内ゲバは極右界隈の“お家芸”とも言えるわけだが、今回の「視聴者の会」と小川氏の場合はそれだけではないだろう。
ようするに、これまでは疑惑に目を瞑ってきた“お仲間”だったくせに、今回の「新潮45」(新潮社)の差別論文問題でスポットがあたり、「視聴者の会」内部のトラブルが報じられたことで、連中は慌てて小川氏をスケープゴートにし、一目散に逃げ出した。そういうふうにしか見えないのだ。
実際、露骨な“小川切り”を始めたのは「視聴者の会」だけではない。小川氏を支えた“安倍応援団”の出版界隈、そして安倍首相周辺も同じだ。
たとえば、これまで小川氏が多数寄稿してきた極右月刊誌「WiLL」(ワック)は、3日、編集部のTwitterアカウントに〈『週刊文春』(10/11)も指摘していますが、小川榮太郎氏の論文が『新潮45』の休刊を招いたことはご承知の通りです。弊誌は、現編集体制に移行した2016年4月以降、小川氏を起用しておりません。論壇誌として「本件につきコメントを」と取材依頼がございますが、受ける立場にないことを申し上げます〉と投稿。流れ弾を避けようと躍起になっている。