常識的に考えれば、これだけ世間を騒がせている渦中の議員で、しかもいまだ公の場で何ら説明していないのだから、いくら県連所属でも首相同席の会合への出席は県連側で自粛させるだろうし、杉田本人も辞退するものだろう。だいたい、党が「十分に注意するよう指導した」と表明した、その夜なのである。
ところが、「笑顔」で杉田議員が現れたということは、安倍首相も杉田議員がやってくることは承知しており、しかも、同席することに躊躇いがないということを示している。つまり、杉田議員は何の反省もしておらず、安倍首相もまた杉田議員の言動をまったく問題視していない、ということだ。
しかも、だ。「週刊文春」の記事によれば、安倍首相は杉田議員の辞職を求めるデモに対して、こう語っていたというのだ。
「彼女はそんなに有名じゃないのに、なんでみんな騒いでいるんだろうね」
有名かどうかの問題ではなく、為政者が生産性という考え方で人の価値を切り分けたこと、その暴論に対して批判が集まっているのに、その意味が安倍首相はどうやら何もわかっていないらしいのだ。
本サイトでは何度も言及してきたように、杉田議員はこれまで「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」などという暴言を国会の場で吐いたほか、慰安婦問題を否定したり朝日バッシングを繰り広げたことで極右政治家として名をあげ、それを安倍首相は「素晴らしい」と評価して自民党に引き入れた。稲田朋美や和田政宗も同じだが、ようするに、立場上、自分では言えない歴史修正や報道バッシングなどの“本音”をズバズバと発言・発信してくれる人物として自民党に招き入れたのだ。
とくに象徴的なのが、杉田議員が自民党から立候補した際のネット用ポスターだ。このとき、難民を中傷したイラストで世界的に問題視されたはすみとしこ氏が杉田氏のイラストを描き、応援ポスターを作成。杉田氏も「とても嬉しいです」といい、いまでもTwitterのヘッダー画像に使用している。政権与党の候補者が、ヘイトスピーチで商売をしている人物のイラストを選挙に使うことを公認するとは公党としての姿勢を疑わざるを得ず、逆にいえばネトウヨへのサービスとしか考えられないシロモノだった。つまり、最初から杉田議員は、安倍首相のガス抜き要員であると同時に、ネトウヨの支持拡大要員だったのだ。「何かあっても怒るのはリベラルだけ。大した問題じゃない」──安倍首相はいまなお、そう踏んでいるのではないか。
しかし、冒頭でも述べたように、杉田発言に対する怒りには鎮火の気配はなく、むしろ自民党が見解を出したあとも国民感情はおさまっていない。安倍首相が「生産性」で人を選別する、価値を決める考え方を諫めるどころか、処分もせずに会合に笑顔でやってきた杉田議員を迎え入れていたとしたら、これは大問題だ。メディアによる追及が必要だろう。
(編集部)
最終更新:2018.08.20 01:33