『ミヤネ屋』の出演者プロフィールで紹介されている野村氏(読売テレビの番組公式HPより)
『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などへの出演でも知られる野村修也弁護士が、17日、所属する第二東京弁護士会から業務停止1カ月の懲戒処分を受けた。
野村弁護士といえば、コメンテーターとして出演しているワイドショーや情報番組では大阪維新の会や安倍政権を擁護・応援する主張が目立つが、これまで金融庁顧問や総務省顧問、厚労省顧問、司法試験考査委員、福島原発事故調査委員会委員など数々の政府機関の公職に就任。2012年1月から同年4月にかけては当時の橋下徹大阪市長の任命で大阪市の特別顧問を務めていた。
野村氏は大阪市特別顧問時代の2012年2月、市職員に対し労働組合に関するアンケート調査を実施。橋下市長らは表向き「市職員による不祥事の究明」などと建前を並べたが、実際には関係者から「思想調査だ」「労組つぶし」という批判の声があがり、内容や調査方法が思想信条の自由を侵害しているなどとして、野村氏に対する懲戒請求がなされていた。
今回、第二東京弁護士会は、野村氏が責任者として行なったアンケートの複数の項目について、職員の政治活動の自由や団結権、プライバシー権などの基本的人権を侵害したと認定。弁護士の「品位を失うべき非行」にあたるとして業務停止1カ月の懲戒処分を下した。
野村氏は日弁連に不服を申し立てるとしている。また、19日にはTwitterにも反論を投稿。〈私が調査した大阪市役所の職員による不正行為の実態については、大阪市のHPに掲載中の報告書をご覧下さい。なお、指摘した問題点は直ちに大阪市自身の手で改善され、市役所内部に新たな規律が設けられるとともに、不当な便宜供与等に対する無駄な税金の支出が解消されました〉と主張した。
しかし、野村氏に対する懲戒処分は、客観的に見ても極めて妥当なものだ。そもそも、野村氏がどれだけ「成果」をアピールしようが、すでに明らかになっているアンケート調査の違法性はいささかも減じない。むしろ、この問題が6年前に起きたことを考えれば、懲戒処分は遅きに失したと言うべきだろう。
念のため経緯を振り返っておこう。問題のアンケート調査は、橋下市長の指示で野村氏が仕切る第三者調査チームが行ったもので、教員をのぞく市の職員約3万4千人全員が対象とされた。当時、流出したアンケート書類がネット上にアップされたのだが、そこには「橋下徹」との大きな署名つきで〈任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に真実を正確に回答していただくことを求めます〉〈正確な回答がなされない場合には処分の対象になります〉などと記されていた。
質問は、大阪市の労働条件に関する組合活動への参加したことがあるか、組合幹部は職場で優遇されていると思うか、組合に加入しないことによる不利益はどのようなものがあると思うか、などの22項目。また電話やファクス等による密告まで呼びかけられていた。
言うまでもなく、労働組合への支配介入は労働組合法違反の不当労働行為であり、憲法で保障されている団結権等の侵害だ。政治的思想について告白を強制するのは思想及び良心の自由の侵害にあたる。また、こうした憲法違反のアンケートを強制し、組合員をあぶり出しながら、さらに回答しない場合は処分すると恫喝する行為も労組法違反の不利益取扱である。極めて悪質な「思想調査」以外のなにものでもない。
実際、橋下市長と野村氏によるアンケート調査に対しては、日弁連が即座の調査中止を求める会長声明を出し、大阪府労働委員会や中央労働委員会も不当労働行為と認定。裁判所も違法の判断をくだしている。たとえば、市職員とOB合わせて59名が大阪市を相手取り損害賠償を求めた裁判では、一審、二審ともにアンケートの一部を「職員の団結権やプライバシーを侵害し違法」と認定した(2016年に市側が上告せず高裁判決が確定)。