この結果に、さっきまで「中止か?」と煽ってきた番組は当然、バツの悪いムードに。安倍首相のぶら下がり会見映像明けのスタジオでは、MCの島田彩夏アナウンサーが「反町さんも『(シンガポールは)今日のドタバタ』と言っていましたが、こういうこと(ブリーフィングや会見の予定変更)する必要があるのかないのか。何か変化が起きたのではないかと思うのが普通」と、米朝に恨み節を語る始末だった。
しかし、本サイトが確認した限り、同時間帯の他局のニュース番組では、ポンペオ国務長官や安倍首相の会見前に「会談中止」を匂わせるような報道はみられなかった。ようするに「ドタバタ」していたのは、米朝ではなく、『プライムニュースイブニング』だけだったのである。
もちろん、状況にネガティブな要素があれば、それをきちんと伝えることも報道機関として当然の責務だ。
だが、昨日の『プライムニュース イブニング』についていえば、あまりに恣意的だった。北朝鮮メディアが金正恩の写真を1回しか使わなかったことや、ポンペオ国務長官の会見が開かれる予定になったこと、そしてそれが30分遅れたというだけで、反町キャスターが「暗雲がただよい始めている」などと言い出し、「中止」を煽るあやしげな観測情報ばかりをどんどんのっけていったのだから。
その無理やりな様子を見ていると、同番組の反町キャスターや記者、コメンテーターには「米朝会談が中止になってほしい」という願望でもあるんじゃないかと勘繰りたくなるほどだった。
いや、深層心理には中止願望はあったのかもしれない。そもそも、北朝鮮の脅威をタテに改憲を狙う安倍応援団はこの間、米朝会談や朝鮮半島の非核化の動きを全く歓迎しておらず、安倍首相と口をそろえて「対話のための対話では意味がない」「圧力の継続が必要」と叫んできた。
南北会談、米朝会談の実現が確実になってからも、安倍首相が蚊帳の外におかれていることに苛立ち、戦後補償をするな、拉致問題を解決するまで経済制裁を続けろ、と、平和的解決をつぶすような主張を繰り返してきた。
表向きはトランプ大統領に同調している安倍首相や官邸も本音は同様だ。米朝合意になれば、日本は隅に追いやられるばかりか、日本に経済援助を求める米国とそれを拒否しろと主張する国内の右派勢力の間で安倍政権は難しい舵取りを迫られることになる。「日本が置いてきぼりになった米朝会談や朝鮮半島の非核化なんてつぶれてしまったほうがいい」といったセリフを口にする官邸関係者もいたという。
最近、とみに安倍政権御用メディア化を強めている『プライムニュース イブニング』や反町氏は、安倍応援団や官邸関係者とべったり取材をしているうちに、彼らの中止願望が憑依してしまったのではないか。その結果、あらゆる事象を中止のシグナルと捉え、中止を示唆するヨタ証言を信じ込んでしまったのだろう。
もっともこうした米朝会談に対するネガティブ報道は『プライムニュース イブニング』でなく、多くのメディアに共通するものだ。首脳会談がかなり具体的で踏み込んだものになると報じ始めたのは、会談前日、昨日の夜からで、それまではやはり、日本の官邸情報に引っ張られて、「交渉は難航する」という情報を打ち続けていた。
しかし、『プライムニュース イブニング』の場合はその会談前日の昨日の段階で中止を示唆してしまったのだから、あまりにも情報能力がなさすぎだろう。スタジオでは上から目線のもっともらしい講釈をたれている反町キャスターだが、その実態は妄想ネトウヨと大差ないのかもしれない。
(編集部)
最終更新:2018.06.12 10:04