同書は、冒頭から安倍邸で昭恵夫人に出されたクッキーを「ボリボリと」仲良く頬張りつつ聞いた話からスタートするという弛緩っぷりなのだが、中身も、問題視された安倍首相の発言や態度について、青山がいちいち擁護していくというスタイル。一例を挙げれば、同年2月に民主党議員が質問している最中に安倍首相が「日教組!日教組!」とデマ情報を根拠に野次を飛ばした件も、青山は同情を寄せるかのように、こうまとめている。
〈この野次は、保守政治家として教育問題に取り組み、日教組に対する強い反発心があることも、背景にはあっただろう〉
反発心があれば首相がネトウヨ化してデマをもとにヤジを飛ばすのも致し方ない……。しかも、安倍首相が辻元清美議員に対して「早く質問しろよ!」とヤジを飛ばした件も、青山は〈声なき声が出てしまった〉〈ほとんど無意識に呟いてしまったのだろう。相当、辟易としていたことがうかがえる〉などと書いている。
もちろん、この「徹底して安倍首相の感情に寄り添う」青山の態度は、いまも変わっていない。今年4月に出版した『恩讐と迷走の日本政治 記者だけが知る永田町の肉声ドキュメント』(文藝春秋)でも、安倍首相を庇ってばかりいるからだ。
たとえば、籠池泰典理事長(当時)の証人喚問がおこなわれていた日の午前11時ごろ、青山の携帯に安倍首相から「籠池理事長の言っていることは嘘だから」という電話が入った。このとき安倍首相は、昭恵夫人の100万円寄附問題について、こう強調したという。
「昭恵は私から言付かった物を渡す時には、必ず『主人からです』って言うんだ。『安倍晋三からです』なんて言わないんだ」
この日午前の証人喚問で籠池理事長は「『一人でさせてすみません、どうぞ安倍晋三からです』というふうにおっしゃって、寄附金として封筒に入った100万円を下さいました」と証言した。これを安倍首相は「嘘」と言い、その根拠を「『安倍晋三からです』なんて言わない、『主人からです』と言うはずだ!」と青山に主張したのだ。
加計問題で「首相案件」と書かれた愛媛県文書の文言に対して、「柳瀬唯夫首相秘書官は首相とは言わない、総理と言うはずだ!」と反論したことが思い返されるが、こんな細かな言い回しをあげつらうことが反証になると信じていることがおめでたすぎる。まともなジャーナリストなら取り合わないだろう。しかし、青山の反応は違う。