いや、セクハラどころではない。松本やその周りのお笑い芸人たちは、山口事件を彷彿とさせる女性への暴力事件まで笑い話にしてきた。
たとえば、2010年6月26日に放送された『人志松本のすべらない話』(フジテレビ)では、千原ジュニアが木村祐一と一緒にある女性を部屋に連れ込んだ際、「私はそんなつもりで来たんじゃない」と言い、帰ろうとする女性の足元に、木村が冷凍室から取り出した鶏肉を投げつけた……という話を「すべらない話」として面白可笑しく披露したことがあった。
このとき千原は「私はそんなつもりで来たんじゃない」という女性の弁に対し、「いやいや、それ以外何があるんですか?と。お互い大人で」などと解説までしてみせた。まさに被害者が訴え出ていれば、刑事事件になっていてもおかしくない問題だが、スタジオでは、松本人志をはじめ共演者の芸人もこのジュニアの話に大爆笑したのである。
つまりこれは、この松本人志まわりの芸人たちに、そういう女性をモノ扱いする価値観、「芸能人に口説かれたらやらせるのが当然」という傲慢な感覚が共有されているということだろう。実際、芸人の世界では、後輩にナンパさせ、合コンをセッティングさせて、強引に女性を口説くということが日常茶飯事になっており、週刊誌ではトラブルもしばしば書き立てられてきた。事件になっていないのは、女性が泣き寝入りしているからというだけではないのか。
下劣な性暴力を芸人たちが「笑い話」にしてきたことは、これをネタとして消費する悪しき習慣が社会に根付いた大きな要因のひとつになっていることは間違いない。そして、松本が明確なセクハラ・パワハラに対してハニートラップ説を唱えたことや、山口達也の性暴力事件を矮小化するコメントが番組で多発したことも、加害男性を守り被害女性を貶めるという社会にある女性差別の温存に、確実に一役買っているのである。
(編集部)
最終更新:2018.05.07 11:34