そうしたこれまでの政府・自民党の動向を考えれば、今回の前川氏の公開授業に対する圧力もまた、安倍政権が目論む教育統制の延長線上と見るのが妥当だろう。
しかも、もう一つ気になるのは、この文科省の教育介入事件に、例の財務省公文書改ざん問題とよく似た構造が見え隠れすることだ。
まず、今回の文科省の圧力行為には、当の省内にも戸惑いが広がっているという。本日の毎日新聞は「講師の人となりが気に入らないから調査するのはやり過ぎだ」(中堅職員)、「これが当たり前になると、教育行政がおかしくなる」(別の中堅職員)という懸念の声を伝えた。
そして、16日に行われた野党6党による合同ヒアリングでは、文科省側は「政治家の関与はあったのか」「公安調査庁や首相官邸は絡んでいなかったのか」と問いただされたが、「確認する」としただけで否定しなかった。
繰り返すが、文科省が違法性のない個別の授業に対し、講師を個人攻撃し、学校側に録音データまで出させようとしたのは異例であり異常だ。文科省側は、初等中等教育局長までの判断で質問し、その後に大臣らへ報告したと言っているが、こんな問題化することが明らかな圧力行為を、教育局長クラスまでの判断で勝手に行うはずがない。
その背後には、加計学園問題で政府を告発した前川前事務次官に対する、官邸側の報復的見せしめ、そして、学校側に対し「前川のような人物に授業させるとどうなるかわかるな」という恫喝のメッセージがあったと考えるのが自然だ。しかし、名古屋市教育委員会が服従しなかったことで問題が早々に発覚し、あわてて、文科省の役人にすべてを押し付けようとしている。そんなところではないのか。
昨年、前川氏は国会で加計問題について「行政がゆがめられた」と断じたが、その政治的としか思えない“歪み”が、この一年あまり、各省庁で次々と顕在化している。防衛省の自衛隊日報問題、厚労省の裁量労働制データ問題、財務省の森友文書改ざん問題、そして文科省の授業検閲圧力問題……。いずれも人々の生活や生命を脅かす深刻な事案である。これらすべてが、安倍政権下で噴出したという事実を有権者は重く受け止めるべきだ。
今回の文科省検閲事件にあたっても、官邸や政治家の関与があったかどうか、徹底追及は絶対不可欠。国会も真相究明に全力をあげる必要がある。
(編集部)
最終更新:2018.03.17 07:22