その意味でも、井ノ原が『あさイチ』で呈した“電力は十分に供給されているではないか”との疑義は、まさに事実認識としても正しい。だが、イノッチの発言が注目を浴びたのは、さらに踏み込んで、原発擁護派の研究者の理屈に真っ向から反論し、それが極めて真っ当なものであったからだろう。
番組では最初のVTRで、6号機と7号機の再稼働を目指している新潟県柏崎刈羽原発への取材が流されたのだが、その内容は主に原発の「安全対策」に焦点を当てたものだった。
スタジオに戻ると、専門家として元東京電力社員でNPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員の竹内純子氏と、再生可能エネルギー関係の著書も多いエネルギー学者の飯田哲也氏が登場。再稼働容認派の竹内氏と脱原発の飯田氏を並べ、この二人の研究者による解説を中心に進んでいくことになる。
そして、MCの有働由美子アナウンサーから「これだけ(電気料金に上乗せされる)コストをかけて安全対策をしてまで、やっぱり再稼働しなきゃいけないのかっていう気持ちになるんですが」と聞かれた竹内氏は、こんな話を長々とし始めた。
「国民にとってのリスク、メリット、そして時間軸ということをやっぱり両方考えないといけないんですけど、みなさん先程冒頭に『原発止まってても生活できてたよね、変わりなかったよね』とおっしゃってたんですけども、実は水面下で、私たちが気がつかないところで実はリスクって大きく膨らんでいて、たとえば電気代。震災前と比べて大きく上昇してしまっていたわけです」
「あと、いまの危機ではなかったにしても温室効果ガスをすごく、原子力を止めることで、他の手段、火力発電という石炭とか石油とかを燃やすことによって出すエネルギーをつくることで、温暖化のリスクを逆に高めてしまっていた。ということがあるので、自分たちに見えるリスクだけがリスクだけじゃない。いますぐゼロにするということはやっぱり他のリスクが大きすぎるということで、一定程度(原発を)使っていこうと。で、先程も(VTRのなかで原発の安全対策にかかる巨額費用の)原資が電気代ですということがありましたけれども、いままでわれわれの電気代でつくってきた発電所を、これをどうやって使っていくか、使い切るか、安全に廃炉まできちんともっていっていただくか、ということを総合的な視点が求められると思います」