こういった境遇に置かれた場合に困るのが就職活動だ。履歴書に現住所を記入することがままならないため、就職しようにもなかなか採用までこぎつけることができない。そうなれば、ネットカフェ難民から抜け出すだけの金銭的な余力を得ることはできないのは言うまでもないだろう。その解決策として、マツコはこのような提案をだす。
「これだけお客さんになってるんだったら、たとえば、ネットカフェの会社で住所をひとつでもいいから、なんか私書箱的なさ、ちゃんと住所のやりとりができるものをサービスで提供するとかしてあげると。たとえば、履歴書にさ「(まんが喫茶)マンボー新宿東口店」とか書けないじゃない? 面接受けてもさ、履歴書にも書けないわけよね、住所を。そうなってくると、そういうきちんとしたやりとりが必要じゃない仕事しかやれなくなっちゃったりとかするじゃない? だから、そういうことをそろそろ、民間だけに任せているとそれはそれで彼らもかわいそうだからさ、いろんな公共的な団体が関わってもっとそういうサポートをしてあげなきゃいけないのかなとは思う」
また、マツコは、ネットカフェの長期利用者が増えている背景に、地方の就職難も見る。地方に就職先がないため、都市部に出て、ネットカフェに滞在しながら職探しをしてみたが、都市部でも就職先になかなか巡り会えないというケースだ。
「まずネットカフェを足がかりにって思ってたら、やっぱり厳しくて、なかなか家を借りれなくて、そこから出れない、みたいなことも多いよ。だから、みんな(身なりを)綺麗にしてるのよね。これぐらいのポーチに化粧品のセットとかちゃんと入れてさ、着替えもちゃんとクリーニング出してさ、三着ぐらいを着回ししててさ、すごい綺麗に住んでるのよ。そういう人にはチャンスを与えてあげる方法を見つけてあげたほうがいいなと思う」
このケースは確かに多いだろう。採用面接のたびに田舎から都市部に出てくるのでは交通費がかかり過ぎるし、職探しの期間中ずっとビジネスホテルなどに泊まるのは相当の余力がないと難しい。親戚や友人が都市部に住んでいない限り、ネットカフェを拠点に職探しせざるを得ないという人は多いだろう。
これは〈自分のせい〉なのか? そういう人たちがギリギリ生きていく支えになっているネットカフェは「蟻塚みたいなもん」なのか?
ネットカフェ長期滞在者は怠け者なのだからホームレス状態から根性を叩き直させるべきという松本らの意見と、ネットカフェ難民が置かれている状況を客観的に見つめて「負のスパイラル」からの脱却策を提示するマツコ・デラックス。
どちらの意見がより正確に社会を見つめているものなのか、言うまでもないだろう。そして、国は貧困層が置かれているこの状況を一刻も早く改善させなくてはならない。
(編集部)
最終更新:2018.02.25 11:51