しかも、この橋下氏による提訴には、もうひとつ不可解なことがある。それは、盟友・松井府知事が起こしたもう一つの名誉毀損裁判と、Twitter上での発言という態様や、提訴の時期がほとんど一緒であるということだ。
周知の通り、維新をめぐっては先日、大阪府知事の松井一郎代表が、新潟県の米山隆一知事を、やはりTwitterでの発言をめぐって名誉毀損で訴えた。米山知事は2012年衆院選と2013年参院選で維新から立候補(落選)した経緯をもつが、その後は維新の姿勢に対して批判的な発言をしており、昨年も森友学園問題をめぐって橋下氏とTwitter上で交戦している。
念のため経緯を振り返っておくと、発端は昨年の10月末。生まれつき頭髪が茶色い女子生徒が大阪の府立高校から髪を黒染めするよう強要され、精神的苦痛を受けたとして府を訴えた裁判に関して、米山知事と国際政治学者の三浦瑠麗氏がTwitterで応酬し、そのなかで米山知事がこのようにツイートした。
〈因みにこの「高校」は大阪府立高校であり、その責任者は三浦さんの好きな維新の松井さんであり、異論を出したものを叩きつぶし党への恭順を誓わせてその従順さに満足するという眼前の光景と随分似ていて、それが伝染している様にも見えるのですが、その辺全部スルー若しくはOKというのが興味深いです〉
これに対し、松井知事が〈米山君、いつ僕が異論を出した党員を叩き潰したの?君も公人なんだから、自身の発言には責任取る覚悟を持ってるでしょうね。いつ僕が異論を出したものに恭順を誓わせたのか説明して下さい〉と噛み付いたのが10月29日。
そこで米山知事は同日、〈どこにも松井さんとは書いていないのですが…。文章上分かりづらかったなら恐縮ですが、状況上誰かは言わずもがな当然松井さんもご存知と思います。叩き潰していないという理屈は勿論言われるのでしょうが、あれだけ衆人環視で罵倒されれば、普通の人は異論は言えないと思います。違いますでしょうか?〉と、暗に橋下氏を批判したツイートだと反論した。なお、同時期には橋下氏が維新所属の丸山穂高衆院議員に対しTwitterで「ボケ」などと批判し話題になっており、米山氏の〈状況上誰かは言わずもがな〉〈あれだけ衆人環視で罵倒されれば〉というのはこの件を指していると思われる。
だが、松井知事は〈話をすり替えるのはやめなさい。僕がいつ党員の意見を叩き潰したのか?恭順させたのか?答えなさい〉などと攻め立て、12月6日付で米山氏を名誉毀損で提訴。米山知事のブログによれば、松井知事は損害賠償として550万円を求めているという。