ところで、『絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!』で問題となったのはブラックフェイスの演出だけではない。ベッキーをめぐる演出にも非難の声が起こった。
ダウンタウン、ココリコ、月亭方正と違い、ゲストとして出演したベッキーはタイキックを受ける対象ではないのだが、「ベッキー 禊のタイキック」と題したドッキリが行われ、ベッキーは身体を押さえつけられたうえ、芸人たちと同様の強烈なタイキックを受けたのだ。
不倫の「禊」という名の下に暴力をふるう。これはまるで姦通罪、不倫をした女性を石打ちによる死刑に処す一部のイスラム国家と同じ発想ではないか。
これについても、「ベッキーに自虐ネタをやらせることで、タレントイメージの復活を手助けするもの」などという擁護の意見が聞こえているが、仮にベッキーにとってプラスになったとしても(騒動がひと段落した時期にこんなパフォーマンスをしてベッキーにプラスがあるとも思えないが)、彼女がそのような扱いを受けるのがテレビで放映されるのは、確実に「不倫に関わった女性は暴力を受けても仕方がない」という価値観を拡散することになる。しかも、過去に何度も不倫が報じられている浜田に対して、このような暴力は行われない。男性の不倫には寛容で、女性にだけ制裁が加えられるという男女の不均等もここにはある。
先ほどのブラックフェイスの問題と同じく、これが倫理的に問題ではないと思って番組をつくっているのなら、ダウンタウンやスタッフの「セーフとアウト」をめぐる境界線は、倒錯しているとしか思えない。
バラエティ番組の表現をめぐる問題といえば、昨年9月に放送された『とんねるずのみなさんのおかげでした30周年記念SP』(フジテレビ)において、同性愛者を戯画化したキャラクターである保毛尾田保毛男を復活させ大炎上、フジテレビの宮内正喜社長が記者会見で謝罪することになった件は記憶に新しい。
この謝罪においても、LGBT差別につながる表現について具体的な検証や再発防止策などは見受けられず、非常に場当たり的なその場しのぎの謝罪が行われたことから批判が起きた。
在京キー局の大手メディアですら、この程度の国際意識と人権意識しかもちあわせていないような状況で、2020年には全世界から人々が集まるイベントを開催しようとしているのだから、新年早々から暗澹とした気分になるしかないのである。
(編集部)
最終更新:2018.01.05 12:46