「政治ネタはNG」という空気が蔓延するテレビ界に迎合せず、しかもきっちりと「話芸」というかたちに落としこんだその技量は素晴らしいものだ。事実、ツイッターではウーマンラッシュアワーの話題が急上昇、多くの人が2人を称えた。
そして、印象的だったのは、ネタを終えた村本の一言だ。番組のエンディングで流れた映像では、ステージ袖の村本は「ただコメンテーターで終わる芸人といっしょにしないでほしい」とカメラの前で述べた。また、ツイッターでも、〈コメンテーターなんか情報集めにしか過ぎなくて、おれがほんとに吐き出す場はセンターマイクの前だけ〉とつぶやいた。
奇しくも先週金曜日、安倍首相に誘われ焼肉を囲んだ松本人志。同日には米軍ヘリ窓落下事故を受けて沖縄県の翁長雄志知事が官邸で米軍機の飛行中止を求めたが、安倍首相は面会もせず、そのくせ、松本や指原莉乃らといった面子と会食。一方、松本は自身の番組『ワイドナショー』(フジテレビ)で安倍首相を平身低頭で迎え、無批判に擁護を繰り返し、ついには“メシ友”に成り下がった。これぞ、地に落ちた「コメンテーター」の姿だろう。
だが、『ワイドナショー』にもコメンテーターとしてたびたび出演してきた村本は、安倍政権を刺激することを恐れてテレビが取り上げようとしない原発や沖縄の基地問題を、漫才というかたちにして「これでいいのか」と視聴者に投げかけた。
〈ほんとに吐き出す場はセンターマイクの前だけ〉という芸人としての矜持と、権力や空気に巻かれないという覚悟。──もしかすると今後、テレビ界には村本は使いづらいという空気が流れるかもしれないが、視聴者は彼らの笑いにビビットに反応したということをよく覚えていてほしい。視聴者が見たいものは、予定調和のコメントでも、ましてや権力の犬となった芸人ではないのだ。
(編集部)
最終更新:2017.12.18 01:23