しかし驚くのは、「ジャニーさん」という名前が飛び出したことだ。ジャニーズ退所後に、独立組メンバーからこの名前が公の場で発せられたのは、はじめてのこと。いや、そもそも退所後にここまで進退に絡んだ話に踏み込んで発言したことは、ほとんどない。
例外は、『SmaSTATION!!』(テレビ朝日)最終回での香取の発言だ。このとき香取は、番組終了を新聞報道で知ったこと、「ずっと続けたかった」こと、そして“新しい道を進もうとしたことで番組が終わってしまった”と述べた。さらに、もうひとつ加えるならば、『72時間ホンネテレビ』で、草なぎが披露した自作曲「新しい別の窓」の歌詞だ。この歌のなかには、こんなフレーズが出てくる。
〈嘘だらけ 悲しい世界じゃ 笑顔が作れない なんにも言えなかった〉
これはあきらかに独立騒動の表面化に解散発表、退所決断にいたるまでのあいだの心境を歌ったものだろう。笑顔も発言も奪われ、飯島氏との独立という道を選ぶと今度は存続させたかった番組は終了に追い込まれてしまった……。香取の「何もないところからのスタート」とは、ジャニーズ事務所からの圧力やそれに忖度するメディアのなかで、自分たちは再スタートを切らなくてならなかった状況を表した言葉なのだろう。
そして、そうした状況はいまも変わっていない。事実、「GQ MEN OF THE YEAR 2017」の授賞式の模様を伝えた『スッキリ!!』(日本テレビ)では、同じく受賞した長谷川博己や斎藤工、RADWIMPS・野田洋次郎らをクローズアップし、中央にいた稲垣・草なぎ・香取の3人が映り込まないような不自然なかたちで紹介したのだ。
あまりにも露骨すぎる「元SMAP外し」だが、ここでナレーションの「天の声」を担当する南海キャンディーズ・山里亮太がすかさず、ほかの受賞者として「香取さんとか草なぎさんとか吾郎さんとか……」と言及し、司会の加藤浩次も「そうか、香取くんと草なぎくんと吾郎ちゃんも選ばれてるのね」と反応。さらにその後、加藤がスタッフに向けて「なんでいないの? 何だよそれ」と呟いている声もうっすらと聞こえた。
だが、『スッキリ!!』のみならず、フジテレビの『めざましテレビ』でも同様に、3人を外したかたちで授賞式の模様を紹介。日テレとフジがこのような放送をおこなったのは、番組スタッフがジャニーズ事務所の顔色を伺った結果だろう。
ようするにテレビ局は、ジャニーズ事務所を逆撫でしないように配慮して、「新しい地図」の3人を取り上げない紹介の仕方をおこなった。これは、政権からの報復を恐れて大本営発表を垂れ流す報道とまったく同じ構図だ。