この対応は、とりわけ美智子皇后がトリルベレール氏に歓迎の意を伝えるものだったのではないか。そのことがカメラ越しからも伝わったからこそ、トリルベレール氏はフランスで批判に晒されることもなかったのだろう。
むしろ、こうした美智子皇后の対応を苦々しく捉えたのが、日本の政府なのではないか。実際、要人のパートナーが「魂を奪われるような最高の記憶」と呼ぶ思い出をつくり、フランスとの友好を深めたというのに、いまだに竹下総務会長はこのときのことをもち出して、同性婚パートナーの出席は反対などと言い出しているのだから。
だが、このように友好的な平和外交の役目をはたしている美智子皇后でさえ、難色を示したと言われているのが、先のトランプ大統領の来日時の面会だ。
昨日の記事でも詳しくお伝えしたが(関連記事)、現在発売中の「週刊新潮」(新潮社)は、官邸関係者による「美智子さまは“トランプさんには会いたくない”というようなご懸念を周囲に示されていたと言うのです」という証言を掲載。さらに「何でも美智子さまは“陛下をトランプさんに会わせてもいいものか”と漏らされていた」という永田町関係の話も紹介しているのである。
トランプの思想と美智子皇后のこれまでの言動を鑑みれば、こうした話が浮上してくるのは至極自然と言うべきだろう。
事実、美智子皇后は「誕生日文章談話」でICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のノーベル平和賞受賞を大きく評価し、〈戦いの連鎖を作る「報復」〉に釘を刺したばかりか、難民支援に強い関心をもち、以前から在日外国人に対するヘイトスピーチの問題に心を痛めていたとされている。これらはトランプ大統領のスタンスとは何もかも相反するものだ。さらに、もしほんとうに皇后が「陛下をトランプさんに会わせてもいいものか」と周囲に漏らしていたとすれば、これは安倍政権が軍事一体化と言えるほど進めている日米関係の強化に、皇室が政治利用されることを憂慮したとしか思えない。
日米関係強化のためには皇室を積極的に政治利用する一方、周囲が難色を示す事実婚のパートナーを美智子皇后が手厚く歓迎した事実の前でも「日本国の伝統が」とわめき立てる──。結局、竹下総務会長をはじめとする安倍政権は、「伝統」を騙った差別主義の肯定のために天皇・皇后を利用しているだけなのである。そして、実際のところ、こうした対応にもっとも胸を痛めているのは、言うまでもなく天皇・皇后なのではないだろうか。
(編集部)
最終更新:2017.12.22 12:03