自民党の選挙マニフェストでは巧妙に言葉を言い換え、さらっと「緊急事態対応」としか書いておらず、選挙戦においても争点にはなってこなかったが、これこそが安倍首相に権限を集中させフリーハンドを与える、つまり「独裁を許す」という、もっとも危険なものだ。
まず、第一に危険なのは、自民党憲法改正草案によると、緊急事態宣言が出されると《内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定すること》や《内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすること》が可能になるため、安倍政権が徹底して軽視してきた国会での議論や手続きをすっ飛ばして法律をつくることや予算を組むことができる。その上、地方自治体に対しては、ナチスが首長を罷免したように、翁長雄志・沖縄県知事を罷免することも可能になるだろう。
さらに、いちばん危惧されるのが、《何人も(中略)国その他公の機関の指示に従わなければならない》《基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない》とあること。すなわち、すべての人が否応なく国に従うことを余儀なくされ、法の下の平等や、思想・信条、表現、言論の自由などといった権利を「制限」されてしまう、ということだ。
くわえて、緊急事態であることを決めるのは総理大臣なのである。閣議を通すとはいえ、「妻は私人」「“そもそも”には“基本的”という意味がある」などというトンデモ閣議決定を乱発してきたことを考えれば、安倍政権下ではまともな判断が下されないことは明白。つまり、北朝鮮によるミサイル挑発でも──たとえ国内に着弾せずとも──安倍首相は緊急事態を宣言できるのである。
自民党は、選挙後「災害時に備えて国会議員の任期延長ができるようにするために緊急事態条項が必要」と訴えてくると思われる。しかし、国会議員の任期延長を憲法上で認めることは、議員がいつまでも居座りつづける可能性がある、とても危険なことだ。いや、緊急事態条項が新設されれば、憲法で「独裁」を保障することになるのである。この衆院選を最後に、普通選挙がおこなわれなくなる──そんな未来がやってくるかもしれないのだ。
これらは絵空事でも妄想でもなく、間もなく国会に提案される予定の法案だ。安倍政権にこの国の未来を明け渡すとは、こういうことなのである。
(編集部)
最終更新:2017.10.22 12:20