そのうえで、水原は動画をこんなセリフで締めくくっている。
「私たちはみんな異なる文化を背景にもっています。でも、私は心から信じています。お互いがもっと理解しあうこと、そして愛と平和が私たちをつなげ、世界をよりよき場所にするだろうということを」
ようするに、水原は中国という国家に謝罪したわけではなく、偏狭なナショナリズムを超えた多様性への理解、平和主義を強く訴えていたのだ。なんと真っ当な、いや、その年齢を考えたら立派すぎるスピーチだったと言っていいだろう。
しかも、水原のこうした姿勢は中国での炎上に対してだけではない。その釈明動画に対して、前述のように日本のネトウヨから理不尽な攻撃を受けても、水原の姿勢はぶれなかった。炎上の少し後、2016年10月14日に放送された『アナザースカイ』(日本テレビ)のなかで水原は、自分が仕事を通して伝えたいメッセージについてこのように語っていた。
「自分のことをすごく愛することってすごく大事で、実際自分もハーフで、アメリカと韓国の血が入っているけれど、日本で育ってきて、自分なりの色んな国のカルチャーを学んできて、また新しい扉を開かせてくれるというか、本当になにか『受け入れ』みたいなのが私のなかですごく大きいテーマかもしれないですね。やっぱり、色々なことを否定するのではなく、受け入れていく、認めていくという心があれば、新しいものが生まれると思っていて。それはたとえば、スタイルでもあり、考え方でもあり、色んなところに通ずると思うんですけど。もう本当に色んな差別がなくなればいいって心の底から私は願っていて。それで苦しんでいる人がすごいいっぱいいて、そういうメッセージをもらったりするし。そういうことを(私は)伝えていきたくて」
自分という「個」を大切にしながら、さまざまなルーツと人々に触れ、カルチャーや考え方を学ぶ。受け入れることで、新たなものが生まれる。だからこそ地球市民として、差別と戦争を憎み、平和を希求する。水原の根源にあるのはそういう思いだ。ゆえに彼女は、中国、日本からの両方の攻撃に対して、同じ姿勢を貫いたのだった。