また、これは女性タレントだけの問題ではない。たとえば、ジャニーズ事務所でも“結婚の掟”が公然と存在し、事務所の意に反して小嶺麗奈と交際を続けたKAT-TUNの田口淳之介が事務所退社に追い込まれているのはご存知の通りだ。
繰り返すが、事務所サイドが恋愛禁止ルールを振りかざしてタレントの“恋愛の自由”を拘束するなどというのは、明らかに人権侵害だ。ましてや、それが結婚や妊娠といった人生を大きく左右するプライベートな部分にまで立ち入ることなど断じて許されることではない。
その非人道性は裁判の場でも認められている。16年1月、女性アイドルがファンとの交際禁止ルールを破り性的関係を結んだことで被害を被ったとして、所属事務所が約990万円の損害賠償を求めていた訴訟に対し、東京地裁は「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」という判決を下し、事務所の請求は棄却されている。
また、弁護士の伊藤和子氏は「AERA」(朝日新聞出版)2016年2月15日号で恋愛禁止ルールについて法的観点からこのように語っている。
「芸能事務所とアイドルの契約において、交際禁止規定という制約を課すのはおかしい。恋愛は、憲法13条で尊重される『幸福追求権』です。いかに契約であろうと、憲法で認められた個人の自由を制限する形の交際禁止規定は無効です」
本稿冒頭にあげた武井咲とEXILE TAKAHIROの結婚妊娠に伴う違約金問題に関しては、ネットを中心に多くの疑問の声がささやかれている。ただ、芸能マスコミは本気でこの構造にメスを入れる気はないだろう。その理由をジャーナリストの津田大介氏は今回の件を受けてこのようにツイートしている。
〈所属事務所の機嫌を損ねれば本名で芸能活動することもかなわず妊娠すら認められない。そんな芸能界と持ちつ持たれつなのがマスコミなので、構造を変えようとする動きも全く起こらない。シンプルに人権よりも芸能村の都合が優先する国ということだよね〉
SMAPやのん(能年玲奈)の事務所移籍に伴うトラブルを受け、今年7月にはついに公正取引委員会が動きだすことになった。NHK は「公正取引委員会が、芸能事務所が芸能人と結ぶ契約の中で、独占禁止法に抵触する不公正なものがないかどうか、調査を始めたことがわかりました」と報道しているが、公正取引委員会の調査により、こういった人権無視の奴隷契約が見直されることが期待されている。
(編集部)
最終更新:2017.09.11 08:20