被害者の2人が米軍基地に対する抗議活動を行っていたことを理由に、まるで「ひかれても仕方ない」「ひかれるほうが悪い」などと、まるで被害者のほうに非があると言わんばかりの攻撃を浴びせている。「ひかれても仕方ない」ような行為が存在するとも思わないが、座り込みは、圧倒的な権力をもって辺野古移転を強行する国家の横暴に対する市民の正当な抗議手段だ。それ以前に、あらためて言うまでもないが、2人はひき逃げの一方的な被害者である。これを“どっちもどっち”とは、トランプやアメリカのオルタナ右翼そのものではないか。それどころか〈犯人は愛国無罪でOK。〉〈 危険で違法な抗議活動している市民を捕らえないと、ドライバーがかわいそう。〉など、逃亡を続けるひき逃げ犯のほうを擁護する声まである。
また、被害者による自作自演を唱えるものや、被害者のひとりが大阪市から来たことをあげつらい、“過激派”“プロの活動家”などと糾弾する声もある。
〈軽自動車? 自作自演? ご苦労様です。〉
〈大阪市の男性(69)がなぜ辺野古の「住民」なんだ? 「市民」じゃなく、共産党系の左翼活動家だろ。〉
〈やっぱ反対してる奴の半分は県外の奴だよな 本土から来たプロ土人 パスポートの色が違う人の可能性もあるねw 自作自演だな。放置で構わんぞ〉
〈 沖縄県外からきたプロパガンダ市民だよ。歩道の縁石に座って車道に足出してりゃ轢かれるわバーカ。そのままミンチになって死ねば良かったのに。〉
〈大阪の人は滞在費は自費ですか?〉
〈反日左翼が被害者だったら、ひき逃げ犯も反日左翼テロ破壊活動家の疑いあり?〉
〈自作自演か、法律違反を厭わないお仲間の活動家にひき逃げされたんじゃねーの?〉
〈支那や北の手先の自作自演〉
〈大丈夫大丈夫!どうせ「沖縄」県民じゃないから〉
こうした「プロ市民」「プロ活動家」攻撃も、日本でもネトウヨや右派陣営が、さんざん常套句として撒き散らしてきたロジックだ。たとえば沖縄デマ報道で大問題になった『ニュース女子』などでも垂れ流された、“反対派は日当をもらって本土からきているプロ市民”“反日組織に日当をもらって組織的に雇用されている”というやつである。その先には“沖縄で活動しているのは中国(時に北朝鮮だったり、韓国だったりもするが)の手先”という、妄想も甚だしい結論に行き着くのだが、もちろんこれらがすべてデマだということはとっくに証明されている。しかし、ネトウヨたちは、今回のひき逃げ事件の被害者にまで、こうした沖縄ヘイトデマや陰謀論をもち出し攻撃するのだ。
ネトウヨたちの頭の悪すぎる、沖縄いじめ、沖縄ヘイトには毎度毎度うんざりさせられるが、それにしても今回のようなひき逃げという卑劣な犯罪の被害者にまでこの罵詈雑言は、本当に異常としか言いようがない。
冒頭でも述べたように、今回のひき逃げ自体はヘイトクライムではない可能性も、もちろんある。しかし仮にひき逃げそのものがヘイトクライムではなかったとしても、ネット上にあふれかえる被害者たちへの罵詈雑言や沖縄ヘイトを見ていると、シャーロッツビルで起きたヘイトクライムと地続きの事態がすでに起きていると言わざるを得ない。
(伊勢崎馨)
最終更新:2017.12.07 04:57