そもそも、日本メディア・ミックスが、神社本庁の外郭団体が出している皇室ファン雑誌の販売を請け負っているのはいったいなぜか。本サイトの取材に応じた都内神社の神職は、こう声をひそめる。
「うちも(「皇室」を)神社本庁から強引に買わされているんですが、その販売に絡んでいる日本メディア・ミックスという会社が怪しいというのは、多くの神職が感じているのではないか。にもかかわらず、神社本庁内では財団と『皇室』、メディア・ミックスの関係は、何か触れてはいけないような空気になっている」
実はその謎は、日本メディア・ミックス代表取締役の高橋氏のことを調べただけでは解けない。日本メディア・ミックスが「皇室」の販売をしている裏には、別の人物の存在がある。その人物とは、現在、同社に取締役として名前を連ねている福田富昭氏だ。
この福田富昭氏は、日本レスリング協会会長という要職にある人物。1965年のレスリング世界選手権で優勝するなど輝かしい経歴を持ち、現役引退後も国内アマレス界の発展に尽力。前述の日本レスリング協会会長のほか、日本オリンピック委員会(JOC)副会長や五輪の選手団長、総監督を務めるなど、スポーツ界の重鎮である。近年の女子レスリング五輪種目存続問題の折、テレビなどで顔を見たことのある人もいるだろう。
日本メディア・ミックスはもともと、この福田氏が代表取締役として1996年に設立した会社だ。途中で、現在の高橋社長に代表の座を譲ったが、高橋社長は、福田氏の日本大学レスリング部の後輩にあたり、他の役員もレスリング関係者が就いている。また、福田氏は現在も同社の20パーセントの株をもち、神社本庁の不動産を転売したディンプル社の元役員でもあり株ももっているという。
いずれにしても、日本メディア・ミックスの経営に福田氏が大きな影響力をもっているのは明らかなのだが、しかし、この福田氏、一方では、「皇室」の事実上の運営元である神社本庁の外郭団体、日本文化興隆財団の理事も長年務めているのだ。
そして、1998年、同財団が「皇室」を出すようになった最初の段階から(当時は「わたしたちの皇室」というタイトルで発売元は主婦と生活社)、日本メディア・ミックスが販売を請け負っていた。
つまり、福田氏は自分が理事を務める神社本庁系財団が出している雑誌を、自分が立ち上げて現在も深く関わる会社で販売させ、利益をあげてきたのだ。普通に考えれば、財団理事が持つ会社に財団の事業を取引させるというのは、利益相反行為に当たる可能性もあり、“私物化”の誹りを受けてもしかたがない。
だが、これは逆に言うと、福田氏のそうした行為を神社本庁幹部らが黙認するほど、神社本庁に深く食い込んでいるということの証でもある。