日野原氏著『十代のきみたちへ−ぜひ読んでほしい憲法の本』冨山房インターナショナル
100歳を超えても現役医師として活躍した日野原重明・聖路加国際病院名誉院長が亡くなった。延命治療を施さず105才での逝去は、日野原氏らしい大往生と呼ぶにふさわしいだろう。
日野原氏といえば、日本初の人間ドッグを開設したり、終末期治療の充実を提唱するなどして、医学界に大きな貢献をしたことはもちろん、地下鉄サリン事件発生時には病院をすぐさま開放する迅速な対応で、被害を最小限に抑えるなど、常に患者の側に立った姿勢を持ち続けたことで知られている。
一方、晩年は自らの戦争体験を通して、平和へのメッセージもおくってきた。それらは、2015年に刊行された『戦争といのちと聖路加国際病院ものがたり』(小学館)に詳しいが、いのちと向き合うはずの病院の中で起きたこと――東京大空襲で収容した1000人の負傷者。救えなかったたくさんのいのち。特高警察による監視、取り調べ。病院ロビーで聞いた玉音放送。終戦直後のGHQによる病院建物の接収――を余すことなく伝えることで、戦争に翻弄されるいのちのはかなさを説いている。
そんな経験を持つ日野原氏だからこそ、改憲にひた走る最近の安倍政権の動向には強い危機感を抱いていた。14年の憲法記念日には、『十代のきみたちへ−ぜひ読んでほしい憲法の本』(冨山房インターナショナル)を刊行。「戦争をできるように憲法を変えるのは反対」と護憲の意志をはっきり表した。
さらに、その危機感が強く伝わってきたのが、朝日新聞の連載「104歳 私の証・あるがまま行く」(16年3月19日・26日)に掲載された一文だ。