この周防監督と同じように、メディアで積極的に共謀罪批判を展開しているのが、作家の平野啓一郎氏だ。
平野氏といえば、デビュー作『日蝕』(新潮社)で第120回芥川賞を当時最年少で受賞、最近では、昨年発表した『マチネの終わりに』(毎日新聞出版)が大きな評判となり、『アメトーーク!』(テレ朝)の人気企画「読書芸人」では又吉直樹やオードリー・若林正恭もそろって大絶賛したことでも話題を集めた。
そんな平野氏は、共謀罪に「表現の自由を奪う」と反対している日本ペンクラブの抗議集会に参加。テレビやラジオなどのメディアにも出演して共謀罪の危険性を訴えているが、平野氏が警戒するのは、やはり「国民の萎縮」だ。
「日常のほんとうに細かなレベルで『これ言っちゃいけないんじゃないか』『こんなこと言うと、こんなことになるんじゃないか』というふうに萎縮して、それに適応するように先回りして先回りしてというふうに考えていくと、どんどん社会の言論活動、あるいは社会の活動そのものが萎縮していってしまいます」(RKBラジオ『櫻井浩二インサイト』4月20日放送)
そして平野氏は、創作活動を行う自分にとって共謀罪は無関係ではない、と述べる。
〈本には人と人とを結びつける作用がある。小説を書く時は色々な人に取材するし、ぼくの本が誰かの何かの原動力になることもある。それが政府に批判的な運動かもしれない。本を書く限り、いつ自分が関わるかわからない点に懸念を感じる〉(朝日新聞4月21日付)
さらに、安倍政権の乱暴さにも平野氏はこう言及する。
「安保法制のときもそうだったし今回も、ものすごく多くの犯罪にふれるような問題が含まれていて、ひとつひとつについて全部説明しなくちゃいけないんですね。だけど、とてもそんな余裕のないなかで法案が提出されていて、例によって首相も、たぶん官房長官も、『ていねいに説明しつづけていく』ときっと言うと思いますけど、1回もそれやったことはないですから、いままで。絶対にやらないと思います。だから、この法案はけっして通してはいけないと思っていますね」(前出『櫻井浩二インサイト』)