記者「これはちゃんと記述に残してください」
今村「どうぞ。こんな、人を誹謗中傷するようなこと許されんよ絶対!」
記者「避難者を困らせているのはあなたです」
今村「うるさい!!」
こうして今村復興相は、最後は記者の排除まで宣言し、怒鳴り散らしながら退席したのである。記者の質問を「誹謗中傷」と言って激昂するなど、大臣の態度としてあり得ないもので唖然とするしかないが、そもそも記者の質問は「誹謗中傷」でも「無礼」でもまったくない。
会見にあったとおり、政府と福島県は自主避難者に対する借上住宅支援を今年3月で打ち切った。この住宅支援は自主避難者にとってほとんど唯一の支援であり、これは今後の自主避難者の生活を直撃するだけでなく、人間としての尊厳さえ奪いかねないものだ。それを、追及するのは記者として当然の行為だ。
「避難指示がない避難は『自主的』な判断によるもので、自己責任である」
こうした風潮は、今村復興相に限らず、震災直後から政府、行政に蔓延している。それは自主避難者の生活を直撃する。避難にかかる費用は自己負担で、国は自主避難者に包括的な賠償をしない。また当初は無償の借上住宅に自主避難者が拒否されることも各地で起こった。
原発事故で失いたくない仕事を捨て、新築したばかりの家を出る。その後運良く避難先に落ち着いたとしても、貯金を切り崩す生活。子どもの幼稚園や学校、進学の問題もあり安定とはほど遠い。夫婦で避難について意見が分かれ、離婚や一家離散に至ったケースも少なくない。誰が好き好んで自主避難などするだろうか。自宅周辺の放射線量は通常の10倍から場所によっては130倍以上あり子どもたちを戻すわけにはいかない。自主避難せざるを得なかったのだ。
さらに、国は今年3月31日までに、福島の11市町村に出した避難指示について、一部の帰還困難区域を除き9市町村で解除した。しかし、解除されたなかには除染も進んでおらずいまだ高い数値を示す場所もあり、実際は帰還できるほど安全な状況になっていない地域も多い。にもかかわらず、国は年間線量が20ミリシーベルト以下になったことを根拠にこれらの地域から避難指示を解除したのだ。言っておくがこれは通常の被曝限度である年間1ミリシーベルトの、実に約20倍の数値だ。
そして問題なのは、避難指示解除に伴う賠償金の縮小、打ち切りだ。原発事故で被害を受けた商工業者や農林業社らへの賠償打ち切りを着々と進め、また住民一人あたりの慰謝料も2018年3月までに打ち切られる予定。さらに避難指示が解除されれば、そこに住まなくても土地や建物の固定資産税が発生する。
避難指示解除とはつまり、さらなる被曝の危険性を無視し、除染さえ進んでいない土地に住民を“強制送還”しようとしているにすぎないのだ。そして被災者たちが「帰れない」と訴えても聞き入れられることはなく、避難指示が解除された今、“自主避難者”として、今村復興相が発言したように「帰らないのは自己責任」との誹りを受け、支援も縮小、打ち切られようとしている。
繰り返すが、好き好んで自主避難している人も、好き好んで解除地域に帰らない人もいない。すべて、原発事故が起きたがゆえのことだ。そして、繰り返すが、そもそも原発事故を引き起こした責任は、電力会社と国策として原発政策を推し進めた政府にある。