さらに、たけしは「一億総活躍」という政策自体の欺瞞を暴く。
「国が国民に「頑張れ」って強いるのは、よくよく考えりゃ「働いて税収を増やせ」「社会保障に頼るな」って言われているのとほとんど同じだろ。政府の人間は反論するだろうけど、それってやっぱり戦時中とほとんど変わらないマインドだ」
「そもそも「活躍」ってのは、誰かの犠牲の上に成り立つものだからね。誰かが活躍すりゃ、その裏で別の誰かが仕事にあぶれたり、悔しい思いをするのが世の常だよ」
「一億総活躍」は「みんなが豊かで幸福に」なんて話ではない。事実、安倍首相が進める政策はたけしが言うとおり、「働いて税収を増やせ」「社会保障に頼るな」というものだ。しかし、この物騒極まりない国威発揚のスローガンと政策を安倍首相は堂々と掲げ、一方で国民はすんなり受け入れている。この現状に、たけしは吠える。
「これだけ世間から「好戦的な首相」と言われているのに、なぜわざわざツッコミどころを自ら作ってしまうんだろう」
「こんな押しつけがましい言葉に拒否反応を示さないニッポン人はやっぱりヤバい」
好戦的なことを隠そうともしない首相も、黙っている国民もヤバイだろ──。このたけしの指摘はもっともだが、くわえてたけしは「ニッポン人は、どんどん「当事者意識」がなくなってる」と嘆く。世界中で起こる無差別テロや、シリア情勢と難民や移民の問題──「世界中で真剣に考えなきゃいけない問題がたくさん起こってる」にもかかわらず、テレビはベッキーの不倫騒動やショーンKの学歴詐称問題に明け暮れていたからだ。
「国として、人として、「よその国で人が毎日死んでいることに無関心」ってのはやっぱりまずいんじゃないだろうか」
国民が世界の問題に当事者意識がもてないのも、首相がとんでもないスローガンを打ち出しても問題にならないのも、メディアに問題があることは明白だ。たけしも「ニッポン社会が自主規制だらけってことは、テレビや新聞みたいなメディアを見てればよくわかる。どのテレビ局のニュースも、申し合わせたように横並びの同じような内容ばかりじゃないかってさ」「ガンガン政治にモノを言うって時代じゃなくなったのは肌で感じるね」と述べている。