NHKが取材をした女子高生は、家庭の経済状況によって進学を諦めざるを得なかったという事情を抱えていた。本来、このとき議論されるべきは、そうした相対的貧困層にいる学生たちへの奨学金制度などの拡充による公的な支援制度のあり方であるはずだが、長谷川氏は貧しさを「絶好のチャンス」などと勝手に問題をすり替え、“自己責任で社会を這い上がれ”と述べるのだ。長谷川氏の経歴によれば中学から大学まで私立校に進んでいるが、そうした学ぶ機会の「恵まれた環境」を若い世代にも、と言うでもなく、「貧困な生活こそ恵まれた環境」と言うのである。
また、「保育園落ちた日本死ね」ブログが話題になった際には、〈保育を受ける権利をみんなが行使できる〉という当然の考えを、〈日本全体の病魔〉〈自分の思い通りのサービスが受けられないなんて、日本死ね病〉と批判。待機児童は東京のみならず地方都市にも広がっている問題なのだが、長谷川氏は“人口の東京一極集中が問題なのだから郊外に引っ越しすればいい話”だとし、〈この問題は「本当に困っている方々」と「実は自分が甘えているだけの人」をちゃんと切り離して考えるべきです〉と、“親の甘えの問題”だと片づけた。
その上、長谷川氏はこんなふうに母親たちを責め立てている。
〈「子供をさっさと預けて働きに出たいママ」が待機してるんです。『待機ママ』問題なんです。ホントは〉
女性の働く権利を認めないだけでなく、生活のためには働かざるを得ないという現状があることもまったく理解せず、“子どもを預けて働きたい母親のワガママが原因”と決め付ける。──こうした女性蔑視的な考え方は、育休延長論でも同様に見て取れるものだ。育休が長引くことがキャリアにも影響するという論に対し、長谷川氏は〈お前ら、子供を産んだんだろうが!〉と吠える。
〈我々男性陣は、どんなに頑張っても妊娠は出来ない。そういう性なんだ。我々男性陣は、何をどう頑張っても、おっぱいを出せない。しょうがないだろ!そういう性なんだから〉
〈育休とったら出世できない? 育休とったら社会に戻れない? 言い訳すんな。バカ。そうやって社会のせい 子供のせい 行政のせい 国のせい 政治家が悪い 男性が悪い 会社が悪い 一生言ってろ!バカ女!!!悪いのはお前らの頭の中と仕事の能力だ!!!!〉
このほかにも、低所得者対策としての軽減税率の話題では“高額な所得税を払いながらも慎ましやかに生活する人”と“ちょっとしか所得税を払っていない、酒やパチンコやキャバクラに散財する自堕落な生活の人”を対比させて、そんな人間に還付されるのはおかしいと言い出すなど、長谷川氏の主張は弱い立場にある人を決め付けに基づいて「甘え」「社会の悪」と貶め、一方の“真っ当な人間”が「損をしているのはおかしい」と訴えるのである。それも、差別的だったり卑劣な言辞で煽りながら。