実際、本サイトの取材に応じた関東圏15クラブのうち、10のクラブが「日本国籍に限る」あるいは「原則として日本国籍」という規定があると回答。また、そのなかの大半のクラブの担当者は、在日コリアンなどの永住権資格者であっても正会員になれないとの認識を示した。
ようするに、名門といわれる会員制ゴルフクラブは、女性に差別的であるばかりか、実のところ極めて人種差別的な会員規定を認めているのである(なお、霞ヶ関CCの場合、関係者によると霞ヶ関CCは正会員の条件に国籍条項は設けていないとのことだった)。
こんな排他的な制度がなんの問題にもならず放置されているというのは、日本ならではといえるだろう。欧米でも性や人種、肌の色でメンバーを限定するゴルフクラブが存在するが、これらに対しては大きな抗議運動が起こっており、全体としては是正に向かいつつある。
たとえば、1990年の全米プロゴルフ選手権では、会場にアラバマ州のショールクリーク・カントリークラブが選ばれていたが、このコースが白人専用だったことから、全米黒人地位向上協会などから抗議が殺到。多くのスポンサー企業がテレビ中継のCMからの降板を表明したこともあり、結果、黒人名誉会長を受け入れる形でかろうじて大会を実施した(「AERA」1992年4月7日号/朝日新聞出版)。アメリカではこの全米プロ選手権の騒動を受けて、その後、全米プロゴルフ協会(PGA)が人種や宗教、性別などの差別を禁止しているゴルフ場をコースの選定基準にし、全米オープンなどを主催する全米ゴルフ協会(USGA)もこれに続いている。
また、五輪をめぐっても、1996年のアトランタ五輪でマスターズを主催する名門オーガスタ・ナショナルゴルフクラブを舞台にゴルフ競技を実施する動きがあったが、オーガスタNGCは当時女性会員が0人で黒人会員もわずかに1人だったことから、IOC理事が強く異議を唱えてゴルフ採用自体が見送られたこともあった(朝日新聞2月1日付)。
このように、外国ではゴルフにおける差別問題は、大きな抗議運動に発展し、それによって漸進的に改善が進んでいる。他方、日本においてはどうか。大きな改善運動が展開されたという話は聞いたことがなく、また過去には「国籍条項」をめぐって裁判に発展したケースも複数あるが、司法ですら判断が割れている。
たとえば、1995年3月には、在日韓国人の男性が「外国籍を理由にゴルフ会員権登録を拒まれた」として東京都のゴルフ場経営会社を相手に賠償を求めた訴訟で、東京地裁が経営会社に30万円の支払いを命じる判決を下した。司法が憲法14条の法の下の平等に照らして社会的に許される限界を超えて違法とし、外国人差別だと認めたケースだ。一方、同年には別の在日韓国人の男性が千葉県のゴルフ場経営会社を訴えている。こちらについては2002年に最高裁が男性の上告を棄却して敗訴が確定したが、当時「時代後れの判決」として厳しく批判する声も上がった。