MBSホームページより
「沖縄ヘイト」というべき悪質なデマがネット上にあふれている。「基地反対運動に地元住民はおらず、県外から動員された活動家ばかり」「過激派が扇動する暴力集団」「運動参加者には日当が出ている」……。こうした事実無根の誹謗中傷は、昨年10月、米軍ヘリパッドの建設が進んでいた東村高江のゲート前で大阪府警機動隊員が反対派住民に「土人」と暴言を吐いたこと、さらに、それを擁護する政治家の発言が相次いで報じられたことで一気に激化した。
「土人」発言を擁護するデモが起こり、挙句の果てには読売テレビやTOKYO MXというれっきとした地上波テレビ局までがデマに丸乗りした“ニュース解説”や“現地レポート”を垂れ流す事態に発展した。沖縄ヘイトはネットを飛び出し、街頭やマスメディアまで侵食しているわけだ。そうした動きを基地に反対する地元住民たちはどう見ているのか。彼らはどんな思いで運動に参加し、何を訴えているのか。そして、なぜ実態とかけ離れた情報が拡散されてしまうのか。住民たちの素顔と、彼らを苦しめるヘイトデマの発信者たちに取材したドキュメンタリー番組が放送され、話題を呼んでいる。
大阪の毎日放送(MBS)が1月29日深夜(※実際の日付は30日)に放送した『沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔〜』。「土人」発言があった直後の昨年11月から今年1月まで約2カ月半の取材を経て制作された1時間番組だが、そこには、「県外から動員された活動家」でも「過激派」でもない、地元住民の生の声がリアリティをもって描かれていた。
東村に隣接する大宜味村で農業を営む男性(番組内では実名・62歳)は農作業の合間に時間を捻出し、北部訓練場ゲート前などで座り込みを続けてきた。自分たちが暮らしてきた自然豊かな「やんばるの森」を守り、オスプレイやヘリが頻繁に飛び交うことによって騒音と墜落の危険が増すことを阻止するためだ。長年運動を続けていると、周囲から「政治的」だと陰口を叩かれることもあったというが、彼は「政治的でないことが世の中にあるなら教えてほしい。物を言わないことだって十分に政治的なんです」と反論する。
普天間飛行場近くの病院に勤務する作業療法士の男性(同・51歳)は、ずっと仕事一筋で反対運動に関心はなかった。それが、同飛行場にオスプレイが強行配備された2012年、たまたま通りかかったゲート前で、高齢者たちが米兵に必死に抗議する姿を見かけ、「放っておけなくなって」運動に参加した。わずか4年前である。にもかかわらず、彼はネット上で「沖縄極左」「過激派」と中傷され、さらには「1970年代の成田空港反対闘争で暗躍した危険人物」とする脅迫状が職場に届くまでになった。そのことについて聞かれた男性は「正直、一度も成田に行ったことないし、それが何の運動だったのかも知らない」とカメラの前で苦笑する。