『僕はこうして科学者になった 益川敏英自伝』(文藝春秋)より
「甲状腺検診は「自主参加」による縮小でなく、拡大・充実すべきです」
福島県で増え続ける子どもたちの甲状腺がんについて、12月20日、ノーベル賞受賞者の益川敏英氏や、物理学者の沢田昭二・名古屋大学名誉教授らが福島県にこんな緊急の申し入れを行った。
本サイトでも何度も指摘しているが、福島原発事故以降、深刻さを増していのが健康被害、特に福島県の子どもたちの甲状腺がんの多発だ。今年9月に公表された 「福島県民調査報告書」によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子どもたちが前回より2人増えて合計174人と膨大な人数となっている。こうした発表が出るたびに、増え続ける甲状腺がんの子どもたち──。
しかし政府や有識者会議、電力会社は「被曝の影響は考えにくい」などと非科学的態度、抗弁を続けている。しかも、現在、福島では子どもたちの甲状腺検査を縮小しようという異常な事態が進んでいるのだ。
こうした動きに危機感を持ち、立ち上がったのが益川氏らだったのだが、提言は当然だろう。
そもそも縮小の動きが明らかになったのは今年8月、地元紙福島民友に掲載された「県民健康調査検討委員会」の星北斗座長のインタビューだった。星氏はここで、甲状腺検査の対象者縮小や検査方法の見直しを視野に入れた議論を検討委で始める方針を示したのだ。星氏といえば、これまでも「現時点では福島で見つかった甲状腺がんは原発事故の影響とは考えにくい」などとその因果関係を否定してきた人物だが、さらにこれに同調するように、9月には福島県の小児科医会が、検査規模の縮小を含めた検査のあり方を再検討するよう県に要望を行っている。