しかも、産経は記事でも、幸福の科学のPRとしか思えないようなニュースを報じている。たとえば、14年9月17日付朝刊では、当時、文科省で設置認可の審査を受けている段階だった「幸福の科学大学」を大々的に取り上げ、幸福の科学学園副理事長のインタビューのかたちで「入試の際に幸福の科学の信者でないから不利になる、あるいは入学後に入信させるようなことはありません」などとアピールさせた(ちなみに16年現在でも文科省は「幸福の科学大学」の設置を認可しておらず、15年に幸福の科学グループが開校した「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」は無認可の私塾である)。
また最近では、ウェブ版の産経ニュース11月14日付で「【アイドル発見】政党に次いで女性6人組アイドルを結成 幸福の科学12月に正式発表 『だって、あなたの幸せをまもりたいから。』」なる記事も掲載している。
その内容は、幸福の科学学生部から生まれた女性アイドルグループ「anjewel」を紹介するというものだが、これがただのベタ記事でないから驚き。学生部広報のコメントなどをふんだんに取り入れるなど妙に力が込められた長文で、ちゃっかり12月に開催された大川総裁の講演の日時・場所のPRもしていた。
しかも、12月12日には「『幸福の科学』信者アイドルユニット ツイッターでデビュー 宗教学者は信者獲得につながるか注目」なる続報を出して、記者がメンバーにインタビューまでしている。
なお、他紙もこの“幸福の科学アイドル結成”を報じているか念のため調べてみたのだが、読売、朝日、毎日、日経いずれも、紙面あるいはウェブ版で一文字たりともも触れてなかった。産経の特ダネ!だ、というのは冗談だが、他にも産経新聞社刊行「夕刊フジ」のウェブ版「zakzak」では、大川総裁のニューヨークでの講演の模様をレポ。〈その迫力ある英語説法に会場は感動と興奮に包まれた〉などと猛烈にヨイショしてきた(16年10月8日付)。
普通の新聞社ではありえない今回の「別冊正論」霊界特集も、つまり、こうした路線の延長線上にあるということらしい。
もっとも、産経の宗教やオカルトへの接近の背後には、思想的な問題よりも経済的な事情もあるのではないかとささやかれている。ネットでは安倍政権と日本社会の右傾化に乗っかって勢いがあるようにみえる産経だが、新聞は部数が激減し、経営事情はかなり逼迫している。17年3月期の中間決算短信でも、売上高は前年同期比5%減の594億円で、営業利益、経常利益ともに赤字に転落してしまった。フジテレビに見放されればいつ倒産してもおかしくないという業界ウォッチャーもいるほどだ。