実際、今月の17日から19日にかけて、その“右派の野望”があらわとなった意見広告が、読売、朝日、日経、産経の全国4紙に掲載された。広告では、“右派の女神”こと櫻井よしこが微笑みながらこう主張している。
〈「もんじゅ」の活用こそ日本の道です〉
〈もんじゅ廃炉ではなく、日本独自の技術で打ち立てた高速増殖炉完成を目指すべきです〉
〈高速増殖炉を巡る日本国内の議論は、誤った方向に行こうとしているのではないでしょうか。私たちは「もんじゅ」の開発継続を求めます〉
この“もんじゅ礼賛”の意見広告を出稿したのは、櫻井が理事長を務める「国家基本問題研究所」(国基研)なる社団法人だ。国基研は、櫻井を代表として2007年に設立された民間シンクタンクで、役員には、日本会議会長の田久保忠衛(副理事長)や、「新しい歴史教科書をつくる会」会長の高池勝彦(同)、政治評論家の屋山太郎(理事)など、産経の「正論」に登場する保守系言論人がズラリと並ぶ。また、大原康男、百地章、西修、高橋史朗など日本会議系の“安倍政権御用学者”が顔を揃えているのも特徴だ。
この顔ぶれからも想像できるように、その活動や主張は極右そのもの。「国防軍」創設を謳う憲法改正や、慰安婦や南京事件否定などの歴史修正、そしてなにより見逃せないのが、日本の核武装論だ。
07年、櫻井は「週刊新潮」(新潮社)の連載コラムで国基研設立の趣旨を語るとともに、北朝鮮の核問題に触れ「核を保有した北朝鮮の脅威から日本を守るためには、同等の力を持つべきだとの議論も当然出てくるだろう」と述べている。事実、国基研のHPに掲載されている「今週の直言」のタイトルにも、こんな言葉が勇ましく踊る。
〈北朝鮮の核に対し自前の抑止力を検討せよ〉
〈核のオプションは放棄できない〉
〈「日本にも核オプションあり」と言ったらよい〉
もはや、言うまでもないだろう。この極右シンクタンクが全国4紙に“もんじゅ存置”を求める広告を出した目的が、日本の核武装と地続きであることは自明だ。
そもそも、歴代自民党政権が、原発と高速増殖炉及び再処理施設にこだわってきた理由のひとつは、潜在的な核開発能力を保持しておくために他ならない。
核燃料サイクルは原発から出る使用済みウラン燃料を再処理し、もう一度原子力発電の燃料として使うという構想だが、原子炉内でウランに中性子を当てることでプルトニウムが生成される。そして、もんじゅの炉心では、プルトニウムの核分裂で「高速」の中性子が飛びし、さらなる核分裂とともにウランのプルトニウム変換が行われ、新たなプルトニウムが「増殖」されるという仕組みになっている。これが高速増殖炉という名の由来だ。