沖縄県議会は先月28日、「土人」発言は「県民に対する侮辱」として国家公安委員長と警察庁長官に抗議する意見書案を可決している。それでも判断できないと、あろうことか沖縄の政策を所管する大臣が知らんぷりを決め込んでいるのである。
そもそも、今回の「土人」発言は、機動隊員という逮捕権をもつ権力側から発せられた憲法に反する「人権侵害」問題であり、警察法違反でもある。警察法第二条には、このように明記されている。
《第二条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。
2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない》
この原則が守られることなく市民への人権侵害と弾圧、暴力を厭わない沖縄の現状において、警察は戦前の国家暴力装置と変わりない。
実際、本サイトの既報の通り、「29万人のための総合教養情報雑誌」と銘打った警察の専門誌「月刊BAN」(株式会社教育システム)なる雑誌では、11月号で沖縄を特集し、“沖縄ヘイトデマ”の発信源となってきた自称ジャーナリストの恵隆之介が寄稿。恵はFacebook上で寄稿したことを報告する文章のなかで、〈大阪府警の機動隊員が基地反対派左翼に「土人」と発言しただけで「差別」ですって?〉〈沖縄に派遣されて基地反対派に罵声を浴びせられながらも必死に国家秩序維持に頑張る警察官諸兄に大きなエールとなると確信します〉などと書き綴っている。
しかも、同誌のバックナンバーを見てみると、執筆者や登場人物には百田尚樹や瀬戸弘幸、渡部昇一、西尾幹二、倉山満などといった極右、ヘイト言論人がずらり。こうしたヘイト雑誌さながらの同誌を、警察は図書係を通じて購読を斡旋しているのである。
つまり、「土人」発言は、警察内部で差別意識を植え付けることによって弾圧・暴力を正当化させる教育の結果もたらされたものであり、さらには戦前と同様、政権と警察が思想的にも一体化している状態のなかから出てきた問題だ。だからこそ、鶴保大臣は明確な差別問題であるにもかかわらず、何事もなかったかのような顔で黙認の姿勢をとるのだ。
だが、どう考えてもこれは大臣として言語道断の態度であり、今回の鶴保大臣の発言は当然、大臣辞職に相当するものである。そして、この発言を安倍首相が許すことがあれば、それは戦前にまた一歩近づいたことを意味するだろう。
(編集部)
最終更新:2016.11.08 09:00