「ハフィントン・ポストで有名な、アリアナ・ハフィントンさんは、この9月にもニューヨークでお目にかかりましたが、ハフィントンさんが、かつてこう語ったと言います。「もし、リーマンブラザーズが、リーマンブラザーズ&シスターズだったら、今も隆々と仕事を続けているのではないか」ということであります」(首相官邸HPより)
ようするに、女性ジャーナリストに聞いた話をそのまま「ボク、よくこんな話をしてるんですよ」とあたかも自分が考えついたジョークのように語っていたのだ。
だが、不幸なことに安倍首相の恥ずかしすぎるスピーチにはまだつづきがある。安倍首相は、「エマ・ワトソン親善大使が色々なところで訴えられておられるように、いまだかつて男女平等を実現した国はありません」と言うと、「しかし、私は「女性が輝く社会」を必ず実現させていきたいと考えています」と述べた。──男女平等を実現するための場なのに、なんで実現するのが「女性が輝く社会」になっちゃうの?と首をひねらざるを得ないが、安倍首相はスピーチをこう締めた。
「日本はいわゆる侍の国として、非常に保守的な国でもあります。しかし、日本が変われば世界が変わっていくと聞いています。みなさん、ともに世界を変えていこうではありませんか」
もう何から何まで意味不明である。男女平等を語る場で「日本は侍の国で保守的」と胸を張ってどうする? しかも、「日本が変われば世界が変わると聞いています」って、いったい誰に聞いたというのか。「日本はサムライ」「日本はスゴイ」って、この人は日本会議の集会か何かと勘違いしてるんじゃないか、と本気で心配になったほどだ。
いずれにしても、安倍首相がいくら空気に合わせてポーズをとってみても、ジェンダー平等なんて概念はハナからもち合わせていない、ということはよく理解できた。「HeForShe」は女性に対する暴力や差別をなくすためには男性の協力が必要だと訴えているのに、そういうことには一言も呼応せず、結局「経済成長」の一点張り。スピーチで安倍首相は「これまで女性の参画は社会政策という位置付けでありましたが、安倍政権ではこれを経済政策と位置付け、アベノミクスの中心政策としてまいりました」と述べたが、深刻化する女性の貧困や是正されない男女間の賃金・雇用格差をはじめ、まずは社会政策として女性の問題に取り組まなくては、ジェンダー平等なんて夢のまた夢だ。
だいたい、「女性が輝く社会」という経済政策は、女性に対して一方的に「子どもを産め。かつ働け」と強いるものだ。しかも、そんなことを強いておきながら子育て支援や男性の家事・育児参加、介護問題はおざなりなままで、結局、女に仕事も家事も子育ても介護もすべて押し付けるご都合主義。なるほど家父長的な「侍の国」であることは間違いない。