左・『いとうせいこうフェス~デビューアルバム『建設的』30周年祝賀会~』オフィシャルサイトより/右・ASIAN KUNG-FU GENERATION公式ホームページより
今年6月、SEALDsの奥田愛基氏がFUJI ROCK FESTIVAL’16に出演することがアナウンスされた直後、「フジロックに政治を持ち込むな」と大炎上したことは記憶に新しいが、この件にかぎらず、日本では、ミュージシャンが政治的発言をしたり、政治的行動を起こすたびに必ず「音楽に政治を持ち込むな」「ミュージシャンが政治に口を出すな」という批判が起きる。
こうした風潮に対して、「『政治と音楽を混ぜるな』って未だにバカみたいな事言ってるのは日本だけでしょ」と、切って捨てたのは、作家のいとうせいこうだ。いとうは日本語ラップのパイオニアとしても知られ、『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)の審査員としても活躍中だが、「BRODY」(白夜書房)2016年10月号に掲載されたインタビューで、パブリック・エネミーやザ・ポップ・グループやリントン・クウェシ・ジョンソンといったポリティカルなメッセージを音楽に織り込み続けたミュージシャンをあげながら、音楽と政治がいかに不可分であるかを語っている。
「海外では逆に政治的な意見を言えない奴はバカにされるし、それが当たり前の音楽のあり方だと思うよ。ミュージシャンもそういう発言やアプローチが出来ないと、自分たちの制作や創造、流通自体が締め付けられるような事態が起こった時に、それに抗せない。日本も悪い意味で世界状況に追いつかざるを得なくなっていると思うし、音楽と政治が関係ないなんてノンキな事を言ってる場合じゃない状況になってて」
いとうの語っていることはまさに正論で、欧米ではミュージシャンが政治的発言をするのはごくごく当たり前のこと。たとえば、先日のUK離脱に関する国民投票の際には、デーモン・アルバーン(ブラー)やジョニー・マーなど数多くのアーティストが各々の意見を発言していたのは記憶に新しい。また、アメリカ大統領選においては、「フェスに政治を持ち込むな」と炎上した今年のフジロック3日目にメインステージのトリを飾ったレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(ご承知の通り、彼らは1997年の第1回目のフジロックのトリも務めている)はバーニー・サンダースの支持を表明。彼らはサンダースの支援集会で演奏するなどもしている。