お決まりのダジャレも封印してデーブが憤るのも当然だ。憲法改正の危険性を伝えても、時すでに遅し。実際、安倍首相は「国民はバカだから黙っていれば気づかない」と言わんばかりに憲法改正の争点隠しを行ってきたにもかかわらず、「(改憲は)政権公約にもしっかりと書きこんでいる」などと開き直り(無論、マニフェストではいちばん最後、ほんの少しの文章でしか触れていない)、「(国民の意見は)国民投票で聞く」と言って、争点隠しを正当化しはじめている。
そして、この安倍首相の“確信犯”に加担し、憲法改正の問題を報道せずに隠してきたテレビも、視聴者を欺いてきたことに責任など感じていない。
その実例を示したのは、やはりフジテレビだ。選挙特番内では、前述のように自民党の憲法改正草案を紹介し、その上で改憲勢力が3分の2議席を越える結果となりそうだとしれっと解説。そしてゲストとして出演していたSEALDsメンバーの奥田愛基氏に司会の伊藤利尋アナが「奥田さんはこの結果をどう思っているのか」と話題を振った。そのとき、奥田氏はこのように発言した。
「世論調査によったら3分の2を超えたら何ができるのかわからない国民が6割以上いた。今回、結果を受けては憲法改正の発議があるんじゃないかという話が多いんですけど、でも選挙期間中に全然その話題になっていなくて、なんで終わった瞬間にこんな話になるのか、テレビをご覧のみなさんも『あれ、憲法改正が今回争点でしたっけ!?』っていう人が多いんじゃないかと」
憲法改正の話題なんて選挙中はニュース番組でも全然出てこなかったのに、どうして選挙が終わったそばから「争点は改憲」と言い出すのか──。この発言はまさしく多くの視聴者が感じた違和感をぶつけたものだったが、しかし、対して司会の宮根誠司は、「あー。逆にね。うん、やはりアベノミクス中心ということもありましたが」と言い、すぐさま別の話題に移したのだ。
「逆にね」って、何が「逆」なのだろうか。逆ではなくて、“争点は改憲”だとわかっていたのに「アベノミクス中心」にミスリードしてきたのは、ほかならぬ宮根をはじめとして報道する側にいるテレビのほうだ。そうした視聴者への“背信”を、宮根は安倍首相と同じで悪びれる様子もない。
この調子だと、国会で憲法の改正発議がなされ、ついに国民投票にもちこまれても、テレビは今回と同様に安倍首相の顔色を伺い、政権に不都合な改憲の問題点や、その危険な内容が検証されることはないだろう。そして、今回の参院選と同じように、国民は深く考える機会を奪われたまま投票を迎えることになる。
ジャーナリズムの役割や責任を放り出し、視聴者ではなく政権に“有益”な報道しか行わないテレビ。参院選における安倍首相の国民への騙し討ち行為もさることながら、メディアによる犯罪的な報道姿勢もまた糾弾に値するものだ。
(編集部)
最終更新:2016.07.11 07:16