まさしくクロウトはだしのやり口だが、松本は「怒っていない」と言いつつ、こうした地上げ屋まがいの“土地転がし”の取引を暴かれたことに裏で相当怒っていたらしい。「週刊新潮」関係者が語る。
「ある筋から、なんとか記事を止められないかというアプローチもありました。それでも、ウチが記事を止めなかったんで、しようがなく番組でギャグっぽく否定したということでしょうね」
実際、松本はツイッターでも番組でもこの土地取引が「個人情報」だとやたら強調していた。そして、この記事にいかに価値がないかを強調し、部数を上げたいなら、僕に言ってきてくれれば、サイパンで水着グラビアをやったっていい、などという笑えないギャグまで口にしていた。
しかし、「新潮」の記事は個人情報でも、価値がないわけでもない。純粋ならお笑い芸人ならまだしも、松本は今や、『ワイドナショー』のキャスターとして、毎週、社会問題や政治について発言し、安倍首相とも対談する存在なのだ。その発言はたびたびYahoo!ニュースで取り上げられ、世論形成にも大きな影響力をもっている。
だとしたら、その主張やコメントにどんなバックボーンがあるのか、をチェックしようと考えるのは当然であり、その人物がどんな私生活をして、どれだけの資産をもっているか、といった報道もそのチェックのためには非常に大きな意味がある。
実際、今回の「週刊新潮」の松本人志“土地転がし”報道は、松本がこのところ、ネトウヨと見紛うほど保守化をエスカレートさせ、安倍首相が『ワイドナショー』に登場した際に、みっともないくらいにへりくだって媚びへつらった理由を明らかにしてくれた。
かつて、すべてをストイックにお笑いに捧げ、刃物のように尖っていた松本も、家庭をもち、子煩悩な一児のパパになった。そして、家族に金を遺すために、裏でコソコソとこんな土地転がしまでやるようになってしまった。
とにかく、自分が獲得した金と地位を守り、増やすことに汲々としている人間が、富裕層だけをひたすら守ろうとする安倍首相とその政策を熱烈に支持したくなるのも当然というべきだろう。
これから先、松本が『ワイドナショー』で庶民も税負担をすべきだ、とか、弱者ばかりが守られすぎているなどとしたり顔で主張したときは、視聴者はこの記事のことを思い出したほうがいい。その言葉はお笑い一本で世の中と対峙している男ではなく、億単位の“土地転がし”をやっている男の口から出ているのだ。
(野尻民夫)
最終更新:2017.12.05 09:46