たとえば、「新潮」の記事には、「沖縄タイムス中堅記者」の話として、「前もって編集幹部がその日の紙面の方向性をガチガチに決めるので、記者はそれに嵌まる原稿を書くだけ。社内で自由に意見も言えず、昨年にはそんな社風に嫌気が差して、連載記事で高い評価を受けたエース記者が会社を去りました」というコメントが掲載されていた。
しかし、「金曜日」が、この「会社を去ったエース記者」である、昨年、沖縄タイムスを退職したジャーナリスト・渡辺豪氏にこのコメントについて当てたところ、渡辺氏は「私のジャーナリストとしての生き方、根幹を否定されたようなもので強い憤りをおぼえます」と、完全否定。しかも、T氏が書いた記事を担当した「新潮」のI氏は、渡辺氏と面識があり、連絡を取れる間柄でありながら、このコメントについて渡辺氏に事実の確認していなかったことも判明したのだ。
他にも、「金曜日」には、「新潮」の記事の嘘が次々と暴かれているが、沖縄バッシング記事がデタラメなのは、これまでの「文春」の記事も同じだ。たとえば、前述した「翁長知事を暴走させる中国・過激派・美人弁護士」なる特集記事などもそうだ。
「公安関係者」のあやしげなコメントがいくつも登場し、翁長知事をなんとか貶めようという意図は見えるのだが、肝心の事実がまったく書かれていない。
同記事には、中国国際友好連絡会という団体が人民解放軍の工作機関で、翁長知事当選の2日後に沖縄入りしたという意味ありげな記述があるが、この団体はたまたま沖縄入りしただけで、翁長知事とは会ってもない。他にも、公安関係者の情報として、翁長知事と何の関係もない琉球独立運動の団体に中国が食指を伸ばしていることや、反対運動に革マル派が入り込んでいることをあげつらい、それだけで、翁長氏が中国と過激派に操られているかのように結論づけるのだ。あげくは、例の「基地反対派の女児暴行デマ」の発信源である“沖縄のネトウヨ”手登根安則氏の基地反対派批判コメントを紹介し、「住民の八割は基地容認」などというデマを喧伝する──。
まるでネット右翼御用達まとめサイト「保守速報」の記事かと見紛うばかりの内容だが、他の記事も同様だ。全国紙の公安担当記者は「文春」「新潮」の沖縄バッシング記事の作り方をこう警告する。
「もしかしたら、公安のネタだからと、ありがたがっているのかもしれないけど、公安、内調の流している情報なんて、裏をとっていない陰謀論がほとんど。こんなものに乗っかったら、スタンス以前に信用をなくしてしまうと思うよ」
ようするに、今回の一件は、たんにライバル週刊誌間のトラブルというだけでなく、保守メディアによる反基地運動バッシング記事がいかにずさんな取材によってつくられているかを、白日の下にさらすことになったというわけだ。
「週刊文春」も「週刊新潮」も今回のトラブルを機に、こんな謀略機関との関係は即刻、断ち切るべきだろう。
(田部祥太)
最終更新:2018.09.08 02:51