大きな国際問題に発展する可能性もある重要な現場に立ち会いながら、記事にしないで、極秘行動をサポートするとは、もはや記者というより、秘書官としか思えないが、そのあと、安倍氏が首相になって第一次政権を樹立した後も、そして第二次政権でも、山口記者はこうした安倍氏の情報操作や安倍氏を利するようなPRを流し続け、安倍首相に不利な情報は一切流さなかった。
また、山口氏はその後、ワシントン支局長に栄転するのだが、その際、韓国軍がベトナム戦争の時に慰安所を設けていたという記事を、会社に無断で「週刊文春」(文藝春秋)に発表。それをきっかけに営業職に配転されることになる。
「これも大元の情報源は安倍政権内部だったと言われているんですが、それはともかく、他媒体に無断で記事を発表したことで、さすがにTBSも問題視せざるを得なくなったらしい。それで山口氏を営業職に異動させたところ、山口氏はこれを不服として退職をしてしまった。しばらく噂を聞かず、いったい何をするのか、と思っていたら、安倍首相のヨイショ本を出すというので、なるほど、と思いました」(前出・全国紙政治部記者)
こんな人物が書くドキュメンタリー本なのだから、「安倍PR」になるのは当然だろう。
いや、それだけではない。実はこの『総理』はそもそも、幻冬舎の見城徹社長と安倍首相サイドが相談をして出版を決めた本らしいのだ。
「今回の出版は、安倍首相から直接、幻冬舎の見城社長に持ち込まれた、と聞いています。いずれにしても、参院選のためのPR作戦の一環であることは確実でしょう。実際、見城さんはこの本に異常なくらい入れ込んでいて、営業にも絶対にべストセラーにするぞ、とハッパをかけています」(出版関係者)
安倍首相と見城社長の“蜜月”については、これまで何度も本サイトが報じてきたが、そのきっかけとなったのは、下野していた安倍氏が2012年の自民党総裁復帰の直前、自分の信奉者だった自称文芸評論家で、現在、極右団体「放送法遵守を求める視聴者の会」事務局長の小川榮太郎氏に『約束の日 安倍晋三試論』という礼賛本を書かせ、それを幻冬舎から出版したことだった。
この本を安倍事務所が大量に買い占めをして、大手書店で売れ行き1位をとらせ、幻冬舎がそのことを謳う大きな新聞広告を打つ。そうやって、安倍晋三という政治家の復活を後押ししたのだ。