たしかに、読売新聞といえば、これまでも富裕層の立場を擁護し、格差助長政策、金持ち優遇政策の旗振り役をつとめていきた。だが、それにしても、今回のパナマ文書に関する報道姿勢は過剰すぎる。
そもそも、読売のパナマ文書への消極姿勢は、10日の“匿名報道宣言”だけではない。パナマ文書に記載されている企業名が少しずつ明らかにになってからすでに1カ月がすぎようとしているが、この間、読売は紙面で一切の企業名、個人名を報じていない。
しかも、今日の夕刊を見ると、読売は「パナマ文書 課税逃れ否定『投資』『信用低下、心外』」などと見出しを立て、タックスヘイブンの問題のすべてを矮小化するような擁護記事を展開。そして、宣言通り、パナマ文書に記載のあった企業の名前を、記事では「通信事業会社」とか「千代田区の大手商社」「ネット通販会社経営者」などと変えていた。さらにICIJのデータベースの画像にまでモザイクをかける徹底ぶりだった。
「読売のこの徹底した方針は、上層部のツルの一声で決まったようです。理由はいろいろあるようですが、ひとつは、広告対策ではないかと言われています。日本の大企業の多くは、タックスヘイブンを利用して税金逃れをしており、財界はマスコミのパナマ文書報道に猛反発している。そこで、自分たちだけ財界に丸乗りして、大企業を擁護し、広告を総取りしようとしているんじゃないか、と。読売といえども、読者離れ、スポンサー離れは深刻ですから、広告は喉から手が出るほどほしい。しかも、朝日問題を拡販に利用したことでもわかるように、読売は紙面を平気で商売に利用しますからね。業界では『読売はこれから、広告営業で“うちはパナマ文書に批判的です”というのをセールストークにするつもりじゃないか』という冗談まで飛びかっている」(新聞業界関係者)
この読売の姿勢に対しては、ネット上でも「読売には新聞としての価値ないよもう」「一事が万事、全てに信憑性なし」「報道しない権利万歳」「さすが政府広報紙、安倍ちゃん新聞」「すげえな読売クオリティ。もう笑けてくるわ」などの声が上がっている。中には、読売新聞の関連会社の名前もパナマ文書に記載されているのではないか、幹部が関係しているのではないか、などと訝しむ声さえ上がっている。
まあ、さすがにこれはないだろうが、しかし、“匿名報道宣言”で、あからさまに大企業を優先し、読者の知る権利を無視した様を見せ付けられると、そういう風に見られてもいたしかたがあるまい。
法制度上で適法か違法か以前に、富裕層と一般層の是正すべき不平等の実態を白日のもとに晒す、パナマ文書。どうやら、それは同時に「日本最大の新聞社」の化けの皮をも剥ぎ取ってしまったようである。
(宮島みつや)
最終更新:2016.05.11 05:29