さらに運転期間が40年を過ぎた高浜1号、2号機においても2月16日に新基準適合検査が終了し、事実上「合格」が確定したが、その審査で大きな問題となっていた地震や津波などへの安全対策は「4号機の審査が終わっているから」としてほぼ無視されたままでの「合格」だった。
こうした問題は高浜だけではない。福島原発事故後も福井県美浜原発2号機や北海道泊原発、茨城県東海原発、愛媛県伊方原発など冷却水漏れが続いているが、いずれのケースも今回同様「環境に影響がない」として政府や電力会社は“事故”として認める姿勢が極めて低い。
こうした姿勢、本心が露骨に現れた典型例が環境相の丸川珠代議員の発言だ。
2月7日、丸川議員は長野県の講演で、東京電力福島第1原発事故後に、国が除染に関する長期努力目標として「年間1ミリシーベルト」と定めていることに関し「何の科学的根拠もない」「反・放射能の人がワーワー騒いだ」と発言して大きな問題となった。さらに衆院予算委員会で発言を追及された丸川議員は一旦はそれを否定したが、後日、一転して謝罪をするドタバタぶりを露呈した。しかしこれは丸川議員個人の問題や見解ではないだろう。原発再稼働や海外輸出をがむしゃらに推し進める安倍政権の“ホンネ”が表れたにすぎない。
そして、この姿勢はマスコミも同様だ。前述した甲状腺がんの問題は新聞でもテレビでも大きく取り上げられることはほとんどなかった。唯一『報道ステーション』(テレビ朝日系)だけが3月11日、大々的に特集を放映予定だというが、その「報ステ」も3月一杯で古舘伊知郎が降板し、体制が大きく変わる。
東日本大震災から5年、原発報道のこれからを考えると、暗澹とするばかりだ。
(伊勢崎馨)
最終更新:2016.02.25 02:02